top of page

高校生がグループごとに合唱をし始めた。動作を交えての合唱や男女が分かれての歌い合いも

続 ウィーンを愛して(9)メルク~ヴァッハウ渓谷:ドナウ川クルーズ

 ウィーンに滞在する主目的は国立歌劇場、楽友協会などでの歌劇、演奏会です。それらを承知で、2016年に続き、2017年5月も看護師二人が希望し、三人で訪れました。
 ウィーンからの日帰り旅行の定番は、メルク修道院を訪れ、ドナウ川でヴァッハウ渓谷を下るクルーズで、お勧めです。各々、ユネスコの世界文化遺産です。前者はオーストリアを代表する建物として秀逸ですし、渓谷はドナウ川で最も美しいと評されています。アナタも是非!
 小生の初体験ですか? 初回が1994年10月で、2017年5月は4回目でした。公園・庭園などもですが、気に入りの場所は、何度訪れても心が和らぎます。
 ウィーン市内のオーストリア国鉄駅で、往復乗車券、メルク修道院の入館券、乗船券がセットになった お得な“Wachau-ticket”を購入しましょう。シミュレーションは[oebb wachau-ticket]の検索で、ÖBBオーストリア国鉄(連邦鉄道)[Wachau-Ticket - ÖBB Rail Tours Kombiticket]が開きますから、関心のあるアナタは是非ご確認を! クルーズ船、ヴァッハウ渓谷を象徴するデュルンシュタインの美しい景色などが出ます。執筆しながら、思い出し、再訪の機会を願っている小生です。
 “Dates & prices”を見ると、大人55.00 EURで、旅程の目安が示されています。ウィーン西駅が起点駅として出ますが(2017年10月現在)、2015年12月にウィーン中央駅が開業し、Railjet の発着も移動したので、中央駅から乗りましょう。ウィーン市内発着であり、西駅限定ではありません。
 西駅ですか? 現在は、ÖBBは地域快速・各駅停車とウィーン~ザルツブルク間を走る私鉄Westbahnの全車両二階建て特急の各々ターミナル駅になっています。
 単独行の際には、ウィーンの森を長大トンネルで走り抜ける特急を使わないで、敢えて、各駅停車で旧線を走りたい願いがあります。えぇ、1994年当時は、特急がウィーンの森の丘陵地を蛇行しながら電気機関車に牽かれて走る丘陵コースでのんびりした印象を抱きました。調べると、ウィーン西駅始発のREXこと地域快速(Regional Express)が旧線を走っています。
 ところで、ウィーンの西方約60kmの地に、St.Pöltenザンクト・ペルテン市があります。ニーダーエスターライヒ州の州都であり、州内にウィーンもありますが、首都ウィーンは特別区であり、区別されています。2015年9月から同市に本拠地がある百年余の歴史あるオーケストラの音楽監督に佐渡 裕が就任したことで知られるようになりました。倉吉市並の人口約5万人の州都ですが、フルオーケストラを保有していることや、美しい市庁舎前広場など、とても魅力的な街です。
 ウィーンからザンクト・ペルテン間は、1994年当時の特急で約50分を要していました。現在は、旧線をREXで所要1時間余、新線を高速で走るRailjet(RJ)で中央駅から便により28分と35分です。

メルク駅で下車(左上)。駅前正面に見える修道院(左下)。メルクの旧市街に接して建つ修道院(中・右)

 ホテルで朝食を摂り、ウィーン中央駅に着きました。今回は景観を捨てて、ザンクト・ペルテンまでRailjet(RJ)で走ります。同駅で乗り換えて、Melkで下車します。
 [oebb]を検索し[Route Planner]を開きましょう。[From: Wien]・[To: Melk]を入れ、日付を適当に決め、08:30発で検索します。ウィーン中央駅08:55発のRJ596に乗り、09:30にSt.Pölten Hbfザンクト・ペルテン中央駅で下車し、同駅09:36発のR2008に乗り換え、09:57にメルクに到着です。中央駅を30分早く発つと、ザンクト・ペルテンの駅前至近地にある市庁舎前広場の散策も可能です。
 列車番号R2008のRはRegioの略で各駅停車です。2016年までは旧車両で、窓を開けて楽しんでいましたが、2017年5月に乗車した際は、新型車両Cityjet(oebb.at/en/news/cityjet)で、バリアフリーの特急車両並の内装・上質な座り心地ではあったのですが、残念ながら窓の開閉が出来ませんでした。
 メルクで下車し、Cityjetを見送り(組写真左上)、駅前正面を振り向くとメルクの修道院が見えます(同左下)。ドナウ川に向かう緩やかな下り道を歩き、突き当たると、左に曲がる車道から離れ、建物の間の小路を通り抜けます。カフェや土産物店などが並ぶ、メルクの旧市街(中)に出ます。まずは、修道院を訪れましょう。右手に歩き、小路を抜け、修道院を見上げながら石段を上がります(右)。地図では探し得ない通り抜けルートです。勘を活かして歩いていただくか、小生とご一緒の機会に・・・。

世界文化遺産メルク修道院のテラスからの景観は素晴らしい(左)。修道院を巡った後は、庁舎ケラーでの休憩。昼食セットメニューは二人がシェア(中)。桟橋に向かう途中、修道院と街のコラボが美しい(右)

 現在、修道院内部は全て撮影禁止になっています。観光客が無造作にフラッシュ撮影し、シャッター音を鳴らすなどがあってのことでしょう。修道院のテラスからの眺望は優れています。南側には駅前(組写真左上)からメルクの旧市街を見下ろす光景が広がり、テラスを右回り進み西側に向けるとドナウの本流が見え、さらに北東方向には観光船の桟橋界隈が広がります。狭い旧市街の他は田園と丘陵地です。
 1994年10月に初めて訪れた際は、時間的なゆとりがなく、可愛いメルクの街で休憩する時間がありませんでした。幸い2012年5月以降は、カフェ等での休憩(組写真中)を楽しむ時間が確保できるようになりました。ウィーン、オーストリアは日が長く、花々の美しい5月がオススメです。
 2017年は日差しが強くて、日陰側の屋外席に座りました。ふと店名を見ると・・・、何とRathauskeller(rathauskeller-melk.at)でした。Rathausは町役場、kellerの直訳は地下で、ワインの地下収蔵庫を活かしたレストランの意味合いです。小生は日々2回食が基本ですが、彼女らは昼食が必要です。店の前に、Menü、即ち、お得なランチセットの内容と価格が書かれている立て看板があります。挙手で合図し、「Ein Menü, share. Please, Danke!」と、和洋折衷的独英表現をし、ジェスチャーを交えての目的達成が実態です。恥ずかしいほどに幼稚で、妻は「あなたの会話は1歳レベル」との評。
 メインは白身の川魚のフライでした。微笑む彼女たち(中)。小生は地元産の白ワインを飲み、のんびり・ゆったりの環境に親しみました。自由旅行ならではのひと時です。さて、ボチボチ発ちましょう。

ドナウ川の景勝地ヴァッハウ渓谷を行き来する観光船(左)。高校生の複数団体が乗り込み、非常に混雑した後甲板の様子と船の後方正面に見えるメルク修道院。本流の桟橋に停泊しているホテルシップ(右)

 修道院を見上げながら、観光船の桟橋へ歩きます。ええ、道に迷うことはありません。修道院のテラスの右周り端から見下ろして、土地勘を付けることが出来ます。かつ、旧市街からは、岩盤の上に建つ修道院を眺めながら、右回りの散策ルートです。のんびり歩いても15分弱で桟橋に到着します。
 2012年5月と比べ、2016年5月に船内が混雑しており、困惑しました。西欧でテロ事件が相次いだことで、中欧を巡る観光客が増えているためと考えたのです。2017年5月はそれ以上で、高校生と分かる大きな団体が後甲板に次々と乗り込んで、大混雑し、戸惑いを感じるほどでした。
 観光船の桟橋は、ドナウの支流を掘り込んだゾーンにあります。出発すると、緩徐に後進し、ドナウ本流に出てから船首を下流方向へと向けます。この間、船尾にメルク修道院が眺められます。一方、長さが100mはあろうと思えるホテルシップが2隻、本流の専用桟橋に停泊していました。
 ホテルシップとの遭遇は、本流航行中も続きます。西欧~中欧の各国を1・2週間かけてゆったりと巡るホテルシップでのツアーは、人気があるのでしょう。

高校生がグループごとに合唱をし始めた。動作を交えての合唱や男女が分かれての歌い合いも

 後甲板に立ち、景色を楽しんでいたら、何と、歌声が響きました。高校生のグループが合唱し始めたのです。一曲終わるごとに、他のグループも! よく見ると、各々に指導教官がいて、簡単な合図をし、歌い始めています。エールを交換するがごとくに次々と歌い続け、終わりません。
 嬉しくなりました。言葉? 何語か分かりませんし、勿論、意味も分かりません。が、雰囲気を感じることはできます。やがて、動作を交えた合唱や、男女が分かれて、各々が歌い合う曲も・・・。
 ハイ、小生は定番的にハミングし、ひと時を楽しみました。一人の彼女(★)に注目して、組写真を整えました。彼女の遺伝子は中東系?

高校生たちが下船したシュピッツの桟橋(左上)。その後も賑わう後甲板(左下)。デュルンシュタインの象徴である水色の塔と城址(→)が見えて来た(中)。美しい塔を眺めつつ、間もなく下船します(右)

 メルクの専用桟橋を13時50分に出港したMS DÜRNSTEINは、14時40分にSpitzシュピッツに到着。高校生のグループが下船しました(組写真左上)。音楽祭ないし合同合宿があるのでしょうか・・・。
 高校生が降りた後も、船室から出て来た高齢者が加わり、後甲板の賑わいが続きます(左下)。が、何とか、後甲板を歩いて移動できるようにはなりました。
 ところで、船名は、ドイツ語では、ご存知の通り女性名詞です。DÜRNSTEINデュルンシュタインは次の寄港地であり、ヴァッハウ渓谷のハイライト! 2012年に乗った際の船名はMS Prinz Eugenでした。同船名は2017年7月号(ウィーン大学附属植物園)で紹介したオイゲン公です。つまり、オーストリア救国の祖で、当時連泊していたホテルの名称であり、ウィーンの名所ベルヴェデーレ宮殿を造った人物です。本船は大改修され、船名が地名に変わっていました。運行するDDSG社のHPでは、本船の写真などが紹介されています(www.ddsg-blue-danube.at/en/fleet/ms-duernstein/)。
 河畔の村々や古城などを眺めつつ、さぁボチボチ・・・。オ、見えてきた(組写真中)! デュルンシュタインの象徴である水色の塔と城跡(→)が見えて来たのです。カメラを構える観光客が増えてきました。日射を避けるように座っていた彼女たちに声をかけ、日差しの強い甲板に誘いました。
 自身、この風景は4回目ですが、2017年5月は、青空に恵まれ、空気も澄んでいました。この年は19時半開演のウィーンでの演奏会を止め、彼女らのために、ハイリゲンシュタット界隈のホイリゲに行く計画でした。このため、デュルンシュタイン下船後、余分に1時間が確保できたのです。
 下船後、直ぐに旧市街に入らず、まずは、河畔道路を下流側へ歩き、古い壁面に沿って、左折し、撮影スポットが連続する登り道を歩きます。行き着くと左に門、右は緩やかな下りのワイン畑沿いにバス停に行く道です。門をくぐるとメルヘンチックな旧市街となり、名物のアプリコットやワインのボトルなどが店頭に目立ちます。間もなく、当たりを付けて、登りの散策路へと右折しました。
 幸い、天候に恵まれたので、彼女らにはナイショで、下船後に城跡まで歩くことを決めていました。城跡に上がる散策路の途中で、景観に恵まれる場所があると確信してのことで、同地で、彼女らを待たせて、自身は頂上まで上がることを内心決めていたのです。
旧市街から散策路を5分程度歩いた景色の良い場所で、意図を告げ、小生は早足で登りました。勿論、眺めの良い場所で立ち止まり、景観を堪能し、写真を撮りつつ・・・。
 8合目相当の場所に、開けた展望所があり、しばし佇んでいたら、何と!彼女が登ってきました。「日差しが強かったから」とのことでしたが、難なく登って来たことに安堵し、秀逸な景観を共有体験しました。やがて、山道が苦手であることが確信できた二人目の彼女も、息を弾ませて・・・。
 頂上は大きな岩であり、女の子たちや、アベックの若者がいました。岩に手を添えて昇り降りする様子を見ましたが、幸い小生は手放しでの昇降でした。また、頂上に至る付近、いわば8合目以降は、ガレ場もあり、とくに降雨後は昇降に注意が必要ですが、乾燥しており幸いでした。
 「12世紀中頃に築かれた城に、十字軍遠征の帰路ウィーン付近で捕えられたイギリスのリチャード獅子心王が幽閉されていた史実は余りにも有名」とオーストリア政府観光局に城跡の紹介があります。

城跡に上がる途中で見下ろしたドナウ川とデュルンシュタインの街・塔(左)。城跡からの眺めは秀逸(中・右)。頂上は大きな岩であり、上がった。360度の景観を眺めつつ、自撮りで記念写真も(右下)

 パステルカラーの可愛い街に降りた後、彼女らの願いで、ワイン畑に面したカフェ(地図C)に入りました。名物のアプリコットジュースを二人が注文し、一人は“アイスコーヒー”を注文。が、後者がなかなか届きません。届いてみれば、ナ何と!生クリームたっぷりで、冷たくはない!彼女は汗を癒し、水分補給目的での注文だったのですが・・・。後日、現地の“アイスコーヒー”は日本のそれと異なり、飲むならスタバでとの記載がガイド本にあった由。笑い話的な失敗体験研修でした。
 
 なお、ヴァッハウ渓谷を紹介する際に、必ず写真で紹介される水色の塔は、聖堂参事会修道会教会の塔です。教会HP(www.stiftduernstein.at/en.html)の写真集も綺麗です。2016年に訪れた際は、中庭の小屋で若干の支払いをし、塔(▲)の下方にあるドナウ河畔のテラスに出て、見上げました。が、実は、この美しい塔は観光船からの眺めが最高です。塔の上に登れると良いのですが、残念ですが不許可です。
 旧市街から城跡頂上(B)までは約20分、高低差100m弱で、旧市街からバス駅(P)までは約5分、約10mの下りで、ワインヤード添いの路です。観光船桟橋(★)を起点に歩いた全コースを地図に示しました。
 また、デュルンシュタインからウィーンへの帰路の基幹駅であるKremsクレムスまでは、路線バスで移動します。具体的には、バス駅Dürnstein/Wachau Parkplatz Ost(右図P)で、Krems/Donau Bahnhof行(WL1路線)に乗ります。乗車時に運転手に支払いをし、終点のクレムス鉄道駅横で下車します。

 この間、所要18分の前半はブドウ畑の間、農家に面した生活道路をクネクネと走行します。私は、この車窓が大好きです。この界隈は、オーストリアの4大ワイン産地の一つで、デュルンシュタインのバス駅から東300m地点にDomäne Wachauなる著名なワイナリー(domaene-wachau.at/)もあります。ここの白ワインはウィーンでも飲めるので、生産地に行ったことと合わせ、お気に入りです。
 なお、コンビネーションチケットはクレムスの桟橋で降りるのが通例ですが、同桟橋から鉄道駅までは2km強を歩くか、バスを利用するとしてもバス停まで歩き、本数の少ないバスを待っても、乗車8分を要します。よって、デュルンシュタインで下船し、旧市街散策を楽しんだ後のポストバスでの移動がお勧めです。とは言え、このバスコース、知名度が増したのか、バスに乗車する際に、個々が支払うので、2017年5月の際は、クレムス駅到着が遅滞し、予定したREXに乗れませんでした。で、ザンクト・ペルテンまで各駅停車に乗り、Railjetに乗り換えて中央駅へ。地下鉄1号線2駅目で下車し、国立歌劇場の隣接地、王宮ゾーンにあるアウグスティーナ・ケラー(www.bitzinger.at/de/augustinerkeller/)に入り、白ワインはボトル2本が空になるなど、祝宴となりました。自由旅行ならではのアレンジです。
 さぁ、是非アナタもメルク~ヴァッハウ渓谷をお訪ねください。デュルンシュタインでの下船もネ!

bottom of page