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グラーツ名物の時計塔4景:左の2点は逆光・奥は王宮エリア。時計塔の下は整備された庭園(右2点)

続 ウィーンを愛して(3)ハプスブルク家の古都グラーツを散策

グラーツのトラム点描:中央駅前の地階トラム駅から乗車。地上に上がる途中、旧型車両と遭遇 (左)。バリアフリー新型LRT車両 (左中)。旧市街の繁華街ヘレン通りを走るLRT (中)。トラム車内で小学生と戯れ、小児科医だと話したら、笑顔で応えた教師 (右中)。中央駅到着時のLRT車内・エスカレーターで地上広場へ上がる様子 (右)

 センメリング鉄道路線を過ぎて、レイルジェットの車窓から市街中心部も流れるムーア川を眺めつつ、グラーツに到着しました。
 駅舎内中央部が斬新な赤基調の壁画で飾られたグラーツ中央駅は2014年に大改修工事が終わりました。大改修前には、駅前広場をトラムが行き来していたのでしょうが、現在は閑散とした印象を覚えるほどに広く感じる駅前広場です。
 広場右手にあるエスカレーターで地階に降りましょう。路面電車専用の地下駅が設けられています。路面電車は自動車道と同様右側通行なので、駅舎側の下りエスカレーターで降りますね。
 中央駅を通過する4系統の全路線が旧市街の中心地市庁舎前広場を通過します。
 グラーツ市内の交通機関乗り放題の一日券を自販機で購入します。市内では、稀な検札に出会えば提示します。が、おそらく検札に出会わないでしょう。ウィーン市内では一度だけ検札に出会いました。楽友協会や国立歌劇場至近の駅はカールスプラッツですが、ここには地下鉄が3系統乗り入れています。地下通路で6~8人の男性が検問し、両方向に地下通路を行き来する利用者のチケット保有を確認していました。
 もし、保有していなかったら罰金が高額なのです。私は、8枚綴りのウィーン市内交通機関全てに乗れるチケットを購入するのが常です。一人なら8日間、2人なら4日間などの使用が可能で、使用日の最初の乗車時に、専用機械に挿入し、刻印することが求められます。一度刻印したら、ポケットに入れ、検札に遭遇する時以外は出すことがありません。グラーツも同様で、とても便利な方式です。そう、改札口相当の場所に職員は皆無です。
 グラーツは、人口約25万人ですが、オーストリアでは人口約180万人の首都ウィーンに次ぐ人口で、路面電車網が充実している印象があります。若緑色のみの旧型電車もありますが、主力のバリアフリーのLRT(Light Rail Transit)は色とりどりで、コマーシャルがラッピングされた車両もあり、旧市街の中心部である市庁舎前広場では、次々と発着するそれらを見ているだけで楽しいですよ。
 日本はモータリゼーションに伴い、各都市の路面電車が廃止されましたが、ご承知の通り、昨今、環境に優しい観点から見直されています。富山市で最初にLRTが導入され、広島・岡山市にも路面電車網がありますが、人口対比でグラーツは路線数が多いです。

市庁舎前点描:心弾む音色に惹かれて近づいたら生演奏中(左)。グラーツ市庁舎(中)。壁面が美しい建物群と広場の公設スタンド(右)。グラーツ出身の著名人が食べたスタンドには記念写真が掲示されている。

 ムーア川に架かる橋を過ぎると旧市街です。市庁舎前で下車しましょう。市庁舎前広場は賑やかです。ここのトラム駅は6系統が行き来しています。機会があれば、郊外まで延びている路線の終点まで呑気に乗ってみたい気もありますが、現状までは市街部に留まっています。
 市庁舎、立派でしょう。広場を取り巻く建物群も美しいですよネ。建物に関心を抱く理由ですか?
 医学部でなければ建築学科の志望がありました。実際、出雲高校卒業後、1969年の現役受験の際には、「紛争で東大の入試が中止されたあおりを受けて」と弁明していますが、不合格でした。二期校は、高倍率の建築学科をあきらめ、温暖な地に憧れて受験した愛媛大学工学部に合格はしたのですが、結局自宅浪人で過ごしました。鳥大に合格した1970年は、実は、二期校で福井大学工学部の建築学科も受験したのです。未熟者で、進路を決めあぐねていた所以です。二期校受験時は、各受験教科を30分早く退席しましたが、結果、思いがけず合格しました。進路選択に迷いましたが、現在に至っています。
 建築、都市の景観には、今でも関心が高いのです。西欧は、例えば、第二次世界大戦で破壊された都市が、従来の景観が尊重され、復元されています。例外はあります。旧市街地区に相当する地区でも、例えばロンドンは斬新な高層ビルが混在し、自身困惑しています。
 代表例ですか? ロンドンでミュージカル【オペラ座の怪人】をロングランしているのが、《Her Majesty's Theatre》で、つまり“女王陛下の劇場”ですが、この正面左隣に高層ビルがあり、劇場正面を撮影する際に、障害になります。
 幸い、グラーツ、ウィーン、ザルツブルクは、旧市街に高層ビルはありません。
 ン?! 城山に登るケーブルカー乗り場に着きました。
 ケーブルカーには一日券を職員に提示し、専用のチケットを受け取ります。はい。何度でも乗り降りできます。旧市街を散策した後、足休めに、再び乗って、城山駅至近のオープンカフェに座り、景色を眺めながら、小鳥の囀りも聴き、ビュッフェスタイルで好きなものを注文し、時間調整的に過ごすひと時は、小生の気に入りです。
 エ? はい。市庁舎前広場のスタンドで、写真を指さし「Schwarzenegger Wurst」を注文するのもOKです。店のおばちゃんは理解し、笑顔で出してくれます。勿論、定番でBeerも併せて注文します。演奏会が始まるまでには酔いが醒めますしネ。
 後の楽しみにして、小生お気に入りの城山公園、樹木に抱かれた散歩道を歩きましょう。
 手入れが行き届いています。ガーデナーが整えている様子に多々出会います。ある時は、可愛い濃紺のトラクターがあり、見るとISEKIとありました。はい。日本製でした。リヤカーのような荷台車を牽引していました。

緑に映える可愛いケーブルカー (左)。岩山の上は城跡公園で、砲の展示もあり、城壁下ではガーデナーが手入れ中 (左中)。城山から水量が多く急流と言えるムーア川と、川の中にあるカフェや、対岸にナマコ様外観のクンストハウスも見える (右中)。市庁舎界隈を俯瞰 (右)

 崖下にムーア川(Mura)が見えます。近づけばわかりますが、かなりの急流です。川幅は狭いですが、国際河川で、ドナウ川に同流するまで、長さは日本一の信濃川よりも長く、流石、大陸の河川と言ったところです。ムーア川の中に銀色調・ドーム型の建物が見えましょう。名称はMurinsel ムーア島で、人工島扱いです。催し物広場もあります。カフェのトイレはとても奇抜で近未来的印象を抱きます。百聞は一見に如かずで、中に入って是非体験を!
 グラーツを訪れるまで存在を知りませんでしたが、EU発足後、欧州文化首都(European Capital of Culture)が毎年指定されるようになっています。オーストリアでは2003年にグラーツが欧州文化首都でした。これを記念し、建築され、今やムーア島はグラーツ市の名所(www.murinselgraz.at/)です。
 城山からムーア川の向こう側に青色のナマコを思わせる斬新的な建物が見えますネ。Kunsthaus(Art house)で、企画展主体の現代美術館機能を担っています。これも2003年の欧州文化首都が契機となって出来たようで、賛否両論でしょう。そう、パリのポンピドーセンターのようにネ。
 ポンピドーセンターは1990年の勤労青年海外研修の際に、外観を初体験しました。周囲はパリ発祥の地帯で、古い教会もありますが、カラフルな原色の工事現場を思わせる外観には驚嘆しました。2012年10月に初めて中に入りましたが、近代美術館や教育文化施設が入っています。小生はジョアン・ミロが好きで、ポンピドー・センターも気に入りの建物ですが、グラーツのクンストハウスは・・・。
 市庁舎の威容も見えます。内部ですか? フリーで入れますが、自身は未体験です。
 時計塔が見えて来ました。

グラーツ名物の時計塔4景:左の2点は逆光・奥は王宮エリア。時計塔の下は整備された庭園(右2点)

 グラーツ名物の時計塔は、東方向にやや降りた所に位置します。昼前なので逆光になりますが、崖下は旧市街の王宮ゾーンになります。大きな時計塔の大きな文字盤と針。長針が時刻を示していることでも著名で、300年以上時を刻み続けています。かつては時間を示す長針1本だったのですが、分を示す短針が後年設置された由。岩山の上のお城では、ザルツブルクのホーエンザルツブルク城もですが、ここグラーツも難攻不落の城だった歴史があります。と言っても、歴史に疎い小生、解説は不能です。
 肌で感じることのできるこの界隈の環境は大好きです。時計塔から降りて行きますネ。整備された庭園になっています。小鳥の囀りを聞きながら、環境に浸りつつ歩きましょう。そして、岩壁に設けられた石段を降りましょう。岩盤をくりぬいたエレベーターで降りるのも良いですが、景色をみながらゆっくりと降りて行くのはおススメです。

旧市街の散策:岩山の崖に設けられた石段を下りて見上げた時計塔 (左)。市庁舎前から王宮エリアへ商店街を歩き(左中)、王室御用達のパン屋さんで買い物 (中)。からくり時計 (右)。路地から撮った時計塔 (右)

 えぇ、この界隈では遠足・社会見学と思える子どもたちにも出会います。挨拶するのですが、子どもたちにしてみれば、稀有な日本人とあって、ジェスチャー主体の笑顔交流に至るのが定番です。日頃の外来診療で、子どもをリラックスさせるべく戯れている小児科医の特技なのかも知れません。
 王宮ゾーンへと歩を進めましょう。狭い路地にお店が立ち並び、観光客が多い一帯です。グラーツ名物のお店、王宮御用達のパン屋さんに立ち寄りますネ。ハプスブルク家の紋章である双頭の鷲、金色の大きな双頭の鷲がお店の正面に掲げられています。お土産を買い、記念写真も定番です。
 旧市街にはからくり時計など、目を引く時計塔にも出会います。
 王宮は建築年代の異なるいくつかの建物で構成されていますが、ココは面白いですよ。出っ張りの塔が見えます。開放されている中に入ると・・・。

王宮:出っ張りの塔(左)の中は稀有な二重らせん階段 (左中)。教会外観(右中)と内部(右)

 はい、稀有な二重らせん階段になっています。敵が攻め込んだ際に、いわば目くらまし的な効果を想定したのでしょうか・・・。
 隣接地にある王宮教会の外観は彫像を含めての流石です。はい、内部も壮麗です。教会に入り思うのは、パイプオルガンの演奏・響きです。残念ながら適うことは稀有ですが・・・。
 さぁ、繁華街のヘレン通りに出て、市庁舎前広場に戻りましょう。はい。スタンドで「Schwarzenegger Wurst und Beer」と注文し、時間を見計らってトラムで中央駅へ戻ります。
 グラーツ旧市街の見所は、州庁舎、武器庫や霊廟、歌劇場、王宮庭園、さらに、中央駅の西側にあるエッゲンベルク城など多々ありますが、何せ、時間の制約があります。何れ、またの機会にでも・・・。

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