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[鳥取大学脳神経小児科の同門会誌に寄稿した原稿です。]

(2016年 2月)

還暦年以降の生涯研修

 

 還暦年になり、ライフスタイルを変えた。大学に入り、ヨット部とマンドリンクラブに入り、明るい間は前者、夕には音楽に浸った。大学2年目に、各先輩から「どちらか一つにしろ」とされ、ヨット部に傾いていた。「女の子のマネージャーが要る。オマエら勧誘せぇ!」で、学館前にいたら、ステキな彼女と遭遇し、声をかけたが拒否された。夜、合奏練習を終えたら、一年生がミーティングに加わった。その彼女がいたことで、ヨット部の先輩に「止めます!」と宣言した。が、心残りが続いた。
 還暦年を迎え、ネットオークションでカヤック(英国製)を得た。ポンプで膨らませ、小脇に抱え、日本海や湖山池・自然護岸の残る湖山川で出艇した。今年7季目になる。昨年は“日本のエーゲ海”こと牛窓で、2人乗り艇を含め、孫娘二人も乗せ、保有している3艇でファミリーカヤックを楽しんだ。
 一方、マンドリンクラブの先輩に「聞いてみろ!百回も聞けば分かる」と促されたのが、ベートーベンのバイオリン協奏曲だった。廉価版のLPレコードを繰り返し聞いて、分かったつもりになっていた。


 竹下教授に指示され、1981年度以降に厚生省・厚労省の研究班などで上京を繰り返していた。後年、妻の促しがあり、演奏会等を視聴し、翌朝一便のANAで帰鳥し、出勤するようになった。が、聴くには程遠い水準だった。詳細は割愛するが、環境の変遷があり、徐々に聴く力が育っていった。
 また、竹下首相の「ふるさと創生一億円事業」で、鳥取市の「勤労青年海外研修事業」第1回の団員に選ばれた。初めての海外が西欧4か国だった。4年目、1994年10月にJTBの“放置企画”を使い、夫婦でウィーンとザルツブルクを自由旅行した。当時高1の娘が「家のことは(兄弟の)3人でこなすから、母(彼女)も連れていけ」と進言してくれたことで実現した。

 

 以降、数年に一度のペースだったが、還暦年を契機に、再々(最近4年は年2回)“西欧研修”が実現できている。旅行業者を使わず、航空会社などに会員登録をしての自主・自立研修である。
 2015年10月の単独ウィーン研修(表)は、初めてカタール航空を使った。2012年5月以降、5回目(単独行3回目)のホテル各8連泊のウィーン研修は、オペラ、クラシックコンサート等が主体で、合間に美術館に入り、公園等の散策をしている。2012年と翌年5月は、自身にクラシック音楽を誘ったマンドリンクラブの先輩(高校教師退職;西欧初;同年生まれ)を伴い、ヴァッハウ渓谷方面、コウノトリが民家に巣造りをしている街ルストや王宮のあったグラーツ等も巡った。各々、ユネスコの遺産地区である。グラーツへはオーストリア国鉄のRailjetで、片道1,200円程度の“超割”で、山岳鉄道としては世界で最初に認定された世界文化遺産のゼメリング鉄道区間を鈍足で蛇行する楽しみもある。単独2回を含めて3回訪問したが、世界遺産地区の徘徊を含め、飽きることがない。

 

 ウィーンへは、4月に発表される国立歌劇場次シーズンの演目をみて、感染症流行の少ない頃を選択する。具体的には5月のゴールデンウィーク周辺は当直等で詰めて、中下旬の催行とし、秋は“柿が赤くなる頃に医者が青くなる”10月の催行。昨年のカタール航空の選択は、お正月に何気なく同HPを見たら、妙に安価で、[新春初売り]の文字が目に入った。〆切前日だが、一日延長するとあり、決めた!
 

 関空発着、ドーハ経由、ウィーン往復の航空運賃は、38,400円、つまり、片道19,200円!当時価格で燃油代・諸税等込みの総額80,870円。ホテルは、Booking com を用いているが、初めて、☆☆☆ Adlon とした。空港から近郊線直結で、プラーター公園至近の駅Pratersternに着き、地下鉄1号線もあり、駅からも近い。朝食付、消費税10%とウィーン市税3.1%を含めて、シングル8泊で50,588円は安価!(過去4回、計32泊したのは、由緒ある☆☆☆☆ Prinz-Eugen:当時中央駅が工事中で超安価だったが、現在は価格が上昇)ウィーンはホテルが安く、シングル室も多いのです。
 

 40年以上前に、学館前で出会った彼女に言わせれば、ウィーンは西欧の田舎・・・。その彼女は、虎さん(小生は寅さん)ファン。鯉・虎さんの試合を米子で見るか、甲子園球場で見るか・・・。勿論、聖地での観戦が嬉しい。ウィーン国立歌劇場(Staatsoper)の歌劇を、東京文化会館やNHKホール等でみるか、本拠地で観劇するか・・・。ウィーン国立歌劇場は、オーケストラ・ピットが見下ろせて、舞台も奥までも通せる席(BALKON MITTE/HALBMITTE やGALERIE MITTE)を、最前列指定でネット購入している。ときに、同価格帯でロジェ(Loge いわゆるボックス席)最前列が配席されることもあるが・・・。4階席相当のバルコン中央ゾーンが134EUR、その周囲(4-7番ロジェを含む)や5階席相当のギャラリー中央ゾーンが95EURで、幸い、願い通りに配席されている。
 

 日本の大型公共ホールと比べて、ウィーン国立歌劇場はコンパクトで、かつ、小生の望む席は(今回初めて座席図でカウントしたら)71席であった。オーケストラ演奏は、ご承知と思うが、ウィーン国立歌劇場管弦楽団 ≒ ウィーンフィルハーモニー管弦楽団であり、前者の団員になり、力をつけた奏者が後者のメンバーになる。後者は同好会的な自主運営であり、よって定期演奏会は土曜日午後と日曜日昼時間帯のみ、年9回(延べ18公演)に留まる。本業がウィーン国立歌劇場での演奏であるがゆえに・・・。
 

 2015年10月の目玉研修は、初体験となったプルミエ公演のヴェルディ作曲【マクベス】と、小生より年上であるが歴史的なコロラトゥーラ・ソプラノであるエディタ・グルベローヴァがタイトルロールとしてウィーン国立歌劇場デビューとなったドニゼッティ作曲【アンナ・ボレーナ】だった。
 歌手陣の中で、前者は、マクベスの親友・バンコーの歌声を聴いた瞬間、内心 Bravo!いやBravissimo!だった。バスのフェルッチョ・フルラネット!今年5月、アリアの歌唱が遥かに多いヴェルディ【シモン・ボッカネグラ】で政敵・義父のフィエスコ役で、彼が出演する。その舞台を95EUR価格帯のロジェ最秀席(7番ボックス最前列で見易い3番席)で視聴できる機会に期待感が大きい。
 後者【アンナ・ボレーナ】のグルベローヴァは超高音の伸びに若干難があったが、信じ難いほどの艶のある澄んだ声にBrava!をかけた。ヘンリー8世・バスの声が今一で、劇中のアリアやカーテンコールでもBravo!をかけなかった。小生はバルコン最前列に居たが、カーテンコールで、何やらウー・ウーとノイズが聞こえてきた。怪訝に思ったが、間もなくギャラリー席からのブーイング(booing)と気づいた。「Boo!」の連発で、子音のBが聞こえず、ウー・ウーと聞こえていた。初体験だった。結局、往年のグルベローヴァのファンが詰めかけ、オペラ通が多く集ったゆえのbooingと理解した。

 

 2015年10月 単独ウィーンの研修内容 演奏会の合間は市内の公園等散策や美術史美術館(年間パス)
 3日(土)

19h30- Staatsoper 歌劇【セビリアの理髪師】
 4日(日)
 

11h00- Musikverein ウィーン交響楽団定期演奏会
15h30- Musikverein トーンキュンストラー管弦楽団(楽友協会)定期演奏会
音楽監督に就任した佐渡 裕 の“黄金のホール”デビュー公演
18h30- Staatsoper    歌劇【マクベス】    プルミエ公演
 5日(月) 

09h40- 西駅発着 St. Pölten半日旅行 Westbahn 二階席;片道 7.90 EUR
19h00- Staatsoper 歌劇【椿姫】
 6日(火) 

07h55- 中央駅発着    Graz日帰り旅行 Railjet;国鉄“超割”片道 9.00 EUR
19h30- Musikverein オーケストラ・ウィーン・アカデミー演奏会 バロック音楽
 7日(水)

12h30- Konzerthaus Schubert-Saal(小ホール)アマリリス弦楽四重奏団演奏会
19h30- Musikverein ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
 8日(木) 

19h30- Musikverein ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(連夜:演奏曲は異なる)
 9日(金) 

19h00- Staatsoper 歌劇【アンナ・ボレーナ】
 10日(土) 

19h00- Volksoper 歌劇【カルメン】

 ウィーン国立歌劇場の来日公演は2012年実績で大半の席が59,000円で、東京への往復旅費と宿泊費も必要ゆえ、結局、ウィーンに出かけて研修することで、チケット代の差額のみで、小生のウィーン研修に係る往復旅費、宿泊費、食費等滞在費の全てが浮き、かつ、お土産代も出る計算になる・・・。
 つい、書き過ぎてしまった。本項の本題は、実は、機窓風景研修が主題であった。
 初めてのカタール航空はドーハの新空港をハブとして、関空にはAirbus A330-200機、ウィーンへはB787-8機だった。後者はANAが最初に就航させ、バッテリートラブル で話題になった最新鋭機で、小生は初めての搭乗だった。主翼はまるで大型の鳥の翼のように曲線が美しい。かつ、窓が縦に長い特徴があり、小生の機窓研修が充実することになる。なお、小生の場合、お金が有り余ったとしても、機の後方窓側席で、時間帯・航路を想定し、順光となる席を購入時に指定するのが常である。つまり、機窓から主翼先端が見え、地球を研修できる席がVIP席なのです。機窓研修成果を2枚。

 トルコ上空で美しい山が遠望できた。帰国後調べたら、トルコ東方にある標高5137mのアララト山だった。古代噴火による成層火山で、旧約聖書にある“ノアの箱舟”が大洪水の後に流れ着いた山!

 なお、トルコ最大の湖・東に位置するヴァン湖は古代の火山噴火による堰止湖・塩湖と知った。

 そして、ドーハから関空への復路。大雲海が広がり、通路席の人が席を立ったことで小生も・・・。

 自席に戻り、期待せずに、機窓から光が漏れないようにそっと覗いたら。何と予想外に快晴だった。

 肩を冷やさないように、客室乗務員の彼女にリクエストして余分に保有していたひざ掛け毛布を遮光用に使い、眺め続けた。間もなく、かつ経験しなかったほどに機窓眼下に山々が迫ってきた。

 カラコルム山脈!世界第二位8611mのK2を筆頭に、8000mを超える峰々、7000m級は60座以上と、極地を除けば、世界第2・3位の氷河があることなどを帰国後に研修した。さて、同定は出来ていないが、抜きん出ている山(写真↓)はK2 かな?!

 なお、機窓風景は朝陽に輝いていたが、機内は夜を演出しており、機窓から主翼を含めて、この景観を研修したのは小生一人!さらに、2016年4月以降、カタール航空が関空から撤退するので、この景観は、わが人生で稀有になった。

 ウィーン等に毎年出かけるようになった発端は、還暦年以降であり、不在時の診療支援をいただいて実現していることを承知しています。感謝しつつ・・・。

 エ?何? いっしょに行きたい?! 連れていけ!?

 ハイ!OKですよ。ただし、2016年5月のウィーンは(ザルツブルク、グラーツやヴァッハウ渓谷への全日旅行を含め)看護師長2名を連れて、7月下旬のスイスは妻と親しい姉妹の3人を伴いスイスパスで、2017年10月初旬は昨年スイス(⇒[スイス悠々]検索でブログが出ます。また、[智頭病院小児科]の「スイス悠々」には、鳥取県東部医師会報の随筆6作も)に同行した彼と再度催行が決定し、2017年5月も仮予約的な看護師2名がいるので、よって、2018年以降ですネ。予約はお早めに!

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