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5月のALPENGARTENは多種多様なアルプスの植物が咲き誇っている。極一部を拡大した組写真

続 ウィーンを愛して(6)ウィーン大学附属植物園

クリムトの[接吻](左)が展示されているベルヴェデーレ宮殿上宮(左中)。同南門の外側至近地にあるウィーン大学附属植物園の南端にあるアルプスの植物を集めたALPENGARTENの入口(右中)。植物園の地図(右)

 ウィーンに滞在する際のホテルですか? パリやロンドン然りですが、鉄道・地下鉄の駅から近く、分かり易い場所にあり、朝食が充実しているホテルで、ホテルのランクと価格を比較して決めています。ウィーンでは中心部にもシングルルームのある良質・格安なホテルが多く、ありがたい限りです。
 2012年5月からの4回、延べ30泊がホテル プリンツ・オイゲン Hotel Prinz-Eugen でした。Prinzは英語のPrinceで、オーストリア救国の英雄であるEugenオイゲン公の名を冠した由緒あるホテルです。ベルヴェデーレ宮殿Schloss Belvedereはオイゲン公が建てており、市中心部の南に位置する丘陵地の見晴らしの良い場所に白亜の美しい上宮Oberes Belvedere(組写真OB)があり、北側に緩やかに降りた場所に公が住居とした下宮Unteres Belvedere(UB)があります。
 オイゲン公の死後、マリア・テレジアに売却され、ハプスブルク家の所有になり、現在のOBは[接吻]を始めとした世界一を誇るクリムト作品を主体とする美術館♪になっています。UBは公の居室など素晴らしい部屋もありますが、再々企画展が催されており、状況により訪れています。
 ベルヴェデーレ宮殿の西側隣のトラムD線が走る南北の通りがプリンツ・オイゲン通りで、さらに、新王宮の前にオイゲン公の巨大な騎馬像が建っています。「帝国軍の総司令官であったサヴォイ家のオイゲン公(1663~1736)は、不世出の軍事的天才」の記載が、ウィーン市観光局[ウィーンへ ようこそ!- wien.info]にありますが、ネットでヒットするのは「プリンツ・オイゲン(重巡洋艦)」で、ウィキペディアには「艦名は17世紀末から18世紀初頭のオーストリアの軍人プリンツ・オイゲンに因んで命名・・・強運の巡洋艦として有名」とあります。
 ホテル プリンツ・オイゲンは、2015年末に開業したウィーン中央駅の至近にあり、ベルヴェデーレ宮殿は徒歩範囲内です。中央駅開業に伴いホテル価格が高騰したので、2015年10月からの3回、計24泊はプラーター公園に近いホテルを確保しています。2017年5月は、オーストリアの消費税13%、特別区のウィーン市税3.20%の両税込かつ朝食付で、シングル1泊58.65EUR(7,253円;123.68円/1.00 EUR)でした。居室環境と朝食の質が高く、日本より非常に安価です。前置きが長くなりました。
 ベルヴェデーレ宮殿へは、東西にトラム0線・18線が走る南の主要道 Landstraßer Gürtel から、北にわずかな上り道になる進入路を南門へと歩くと、丸い池の向こうに優美な姿を目にすることができます。南門の手前で右側・東側を見ると、レンガの塀と鉄格子の門があります、この向こうがウィーン大学の附属植物園のベルヴェデーレ出入口とALPENGARTENです。
 ♪:クリムトなど主要作品は撮影禁止。組写真左の[接吻]は館内にある撮影用模造品です。

ウィーン大学附属植物園の南端にある5月のALPENGARTEN:ガーデナーが手入れ中(左・左中)

 ウィーン大学のホームページ(www.botanik.univie.ac.at/)には[BOTANISCHER GARTEN DER UNIVERSITÄT WIEN][Department of Botany and Biodiversity Research, Faculty of Life Sciences]と紹介されています。鳥取大学なら乾燥地研究センター相当の研究施設ですが、市民に開放されています。「Guest information」に出入口は3か所あり、北端の道路名を冠したMechelgasse/ Praetoriusgasseが管理棟と温室がある主門で、ベルヴェデーレ宮殿上宮至近の門はEntrance Upper Belvedere/ Alpinegardenとあります。そして「ADMISSION FREE !」の情報も。
 ウィーンの一般的な公園・庭園と異なり、「Dogs and bicycles are prohibited」とあり、研究用の植物を保護する観点から、犬連れや自転車走行は禁止と分かります。
 ただし、ALPENGARTENは上記の地図(組写真右)から外されています。理由は定かではないのですが、入口の簡易小屋で、現金で3EUR 程度の支払いが必要ゆえ? 入園券はありません。無料ゾーンの大樹に包まれる植物園本体と異なり、アルプス植物園は、迷路のような小路がある箱庭的規模ですが、多種多様な高山植物が植えてあり、人手を要する繊細な管理が必要なための支払いだと思えます。
 智頭病院に異動後、山野草に関心が芽生え始め、ここALPENGARTENでも、つい、時間を費やしてしまいます。オーストリアアルプスに咲く高山植物が集められ、各々の地面に学名を示したプレートが立ててありますが、その知識に無縁な小生は、ただ趣味的に写真を撮るのみ・・・。
 スイスアルプスの高山植物園ですか? ベルナーオーバーラントBerner OberlandにあるシーニゲプラッテSchynige Platteに西欧最古の著名な高山植物園があります。と言っても、アイガーなど名山を眺めながら2000m近い山上を散策するスタイルで、雄大で、とても伸びやかです。神戸市、六甲山上にある六甲高山植物園が姉妹縁組をしており、園内にそのことを示す看板があります。

5月のALPENGARTENは多種多様なアルプスの植物が咲き誇っている。極一部を拡大した組写真

 シーニゲプラッテですか? 2005年6月初め、結婚30周年記念として、格安ツアーでしたが、インターラーケンに2連泊した際の全日自由行動の日に初めて訪れました。2005年は、既に真夏日が続いており、高山植物園は開園前でしたが、かなりの高山植物が咲き誇っており、一方、観光客は希少でしたから、堪能しました。開園後は進入禁止になる気配のある小路も自由に巡れたのは幸いでした。
 スイスで体験した登山鉄道は、何れも景観が素晴らしいのですが、シーニゲプラッテに登るミニ登山鉄道の景観も非常に優れており、かつ、乗車自体が楽しいのです。
 はい。ミニ登山鉄道と書きましたが、線路幅がナローゲージの800mmで、最大250‰の急勾配を全線ラック式で登ります。インターラーケンの街やブリエンツ湖などが眼下に広がり、“アルプスのハイジ”の光景が線路添いに広がり、そして、雄大なアイガー、メンヒ、ユングフラウの三山を眺めながらの高低差1403m(584m⇔1987m)、7.26kmを52分で登る車窓は秀逸です。機会に恵まれれば「続 スイス悠々」編でご案内しましょうか・・・。
 ALPENGARTENを後にして、小路を北へ歩むと、即、大樹が多い森のような環境に一変します。
 では、10月のウィーン大学附属植物園に誘いましょう。

10月のウィーン大学附属植物園:西隣にあるベルヴェデーレ宮殿上宮(左)。春に向け、ガーデナーが庭の手入れ中(中)。乳児を連れて散策していた女性が長椅子に座している姿を見てルノワールの絵を想起した(右)

 園内は散策路が整備されており、南北に長く東西が狭いこともあり、迷うことはありません。適当に、ゆっくりと歩き廻ります。
 5月に訪れると、ジョギング中の多くの人たちを目にします。或いは、ベンチに座して語らう高齢者や、メジャーを持って大樹を、例えば、ワーグナーの楽劇【ニーベルングの指環】でお馴染みのトネリコの幹の周径を測る研究者と分かる方たちも・・・。
 10月の西欧は、日本の紅葉と異なり、“Golden October”の呼称がありますが、園内では“紅葉”も目立ちました。10人に満たないグループの方々とすれ違う場面もありましたが、訪問者は少なく、とても静寂で上質な環境です。
 春の花の季節に備え、花壇の手入れをするガーデナーさんたちも見ました。秋の花は咲いてはいますが少なく、もっぱら、大樹、針葉樹や広葉樹とそれらに包まれる環境に浸りつつの散策を楽しむことになります。
 エッ、車の騒音? 南門界隈では、ウィーン市を囲むギュルテルと称する環状大通りに近いのでトラムの走行音と合わせ、聞こえます。植物園内では救急車のサイレンは例外ですが、ほぼ聞こえません。子ども向けの遊園地が併設されている、例えば、市立公園などと異なり子どもの声もほぼしません。
 ギュルテルですか? Gürtel(英Belt)、正確にはGürtel Straßeは、旧市街の中心部を囲むリング通りの外側にある大通りです。リング通りが環状線ゆえ、外環状線と言ったところでしょうか・・・。

10月のウィーン大学附属植物園:大きな常緑樹と紅葉した広葉樹が多い静寂な環境(左)。5月と比べると園内を散策・ジョギングしている人は少ない(中)。走って視界から消えた彼女が大樹に向き合っておられた(右)。

 小生が疎いためでしょうが、日本では、少なくとも樗谿公園など鳥取市内の公園では、見たことのない光景に出会いました。赤いトレーナーを着た女性が小生の至近を走り去ったのですが、ふと気づくと、大樹に両手を置いて動かない後姿を目にしたのです。
 小生は樹木等の写真を撮りつつ、ゆっくり散策していたのですが、フト、彼女に動きがないことに気づきました。一層ゆっくりした歩きで、垣間見ていたのです。大樹に向き合う彼女の姿を撮りました。
 小生も真似して・・・? No!とても無理です。大樹と対する際に、一体、どんな心境で臨むのか、実践しどんな感覚を得るのか・・・など、ドイツ語、いや、英語が話せれば尋ねてみたい気にもなるかもしれませんが、小生の語学力では尋ねること自体が、失礼になる・・・。
 小生が歩き去り、一旦視界から消えた後、再度、彼女が走り去る姿を目にしました。彼女が大樹に向き合っていたのは5分程度だったでしょうか・・・。小生は実践体験皆無です。あなたは?
 植物園の北東部は、道路を隔てて、集合住宅が並んでいます。高低差があり、植物園が高い位置にあるので、塀は低く、集合住宅の外観を目に留めることが出来ます。高級住宅街と言えましょう。ジョギングする人たちは界隈の住人なのでしょう。秀逸な環境に憧れを抱きました。
 主出入口がある北端ゾーンには、小規模の温室、砂漠気候固有のサボテン類、小規模ながら薔薇園もあり、楽しめます。トイレ? 新しくはないのですが、清掃が行き届いているトイレは北西ゾーンの片隅にあります。公園など公共施設の有料トイレと異なり、大学附属施設ゆえでしょうが、無料です。
 周回し、ベルヴェデーレ門から出ましょう。

植物園を出て、再びベルヴェデーレ宮殿上宮へ:白いドレスで(★)記念写真の撮影中(左)。上宮の北側には美しい彼女・スフィンクス(獣人)が・・・(中)。小生のお気に入り(中下)。シュテファン大聖堂の尖塔が目立つ(右)

 植物園を出て、南門から再びベルヴェデーレ宮殿へ。美しい建物、彫像など、小生は好きです。上宮を北側に出ると下り斜面で、整備されたフランス式庭園があり、花壇の花々と噴水に心が和みます。
 そう、お顔・上半身が美形で、下半身が獣で立派な羽根も有しているスフィンクスの彼女達との出会い、再会も楽しみです。何体あるのか数えたことはありませんが、表情は皆異なります。小生のお気に入りの彼女は上宮入口前の左手前に居て微笑をたたえ、歓待してくれます。
 そう言えば、多種多様な彫像がある美しい噴水は、水が流れる・噴き上がるのは10時以降で、早朝の散策時はジョギングする人以外、静寂な環境です。下宮に近づくと、楽器を持つ美しい彼女たちが両側に立ち並び迎えてくれます。えぇ、言葉が不要で、笑顔で出迎えてくれるので、再会は楽しみなのです。
 上宮から眺める北側は、視界が樹木に遮られることなく、伸びやかに広がります。庭園を降りた突き当りがベルヴェデーレ宮殿下宮(UB)で、オイゲン公が住まいした建物です。市街中心部にあるシュテファン大聖堂の尖塔(組写真S)はランドマークです。北側の山稜はカーレンベルクの丘(K)で、路線バスで上がることが出来ます。ウィーン市内の北端にあるので、乗り放題券が使えます。
 K手前の裾野の麓がベートーベンゆかりのハイリゲンシュタット(H)で、新酒ワインと郷土料理を出す居酒屋「ホイリゲ」があり、小生の気に入りのゾーンです。
 え? 行く? はい、ではご案内しましょうか・・・。

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