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自席から“黄金のホール”の展望。同伴の二人は L3,4席(左)。黄金の女神像に接した自席でチケットを手にして(中)。ザイフェルト氏と共に(右)

続 ウィーンを愛して(1)“黄金のホール”オーケストラシート

Pratersternとウィーン中心部の地図(グーグル地図を活用;左)。空港からの近郊線S7はドナウ運河(中)を渡り、プラーター公園の観覧車(右)が見えると、Praterstern駅に到着

 恵まれてウィーンに毎年出かけている。主目的はオペラ・演奏会で、日中は近郊に日帰り旅行に出かけ、市内に居ては“公園都市”ウィーンを満喫している。端緒は2012年5月で、奮闘記を「ウィーンを愛して」と題して本会報に6回シリーズで掲載(No.401-6:2012年9月号~2013年7月)していただいた。以来、ウィーンが6回目(通算48泊)となった2016年5月は、淑女二人を伴っての自主・自由設計“生涯研修”旅行!
 アナタを伴い共に満喫する感覚で「続 ウィーンを愛して」を執筆したい。
 西欧へは日本を昼前後に発ち、夕刻の現地着が常であった。が、2014年10月に、初めて、エミレーツ航空を用いた。金曜日勤務終了後に関空に移動し、夜行便の乗継でウィーンに到着し、夜のオペラ(気軽な喜劇【愛の妙薬】)が体験出来た。現地を発ち帰国する際もホテル発が早くないので利点があり、かつ、価格も安いと知った。2015年のお正月“松の内”に何気なくカタール航空を見たら、何と“福袋”で、往復航空券が38,800円(関空発着ドーハ経由ウィーンの片道が19,400円)。現地に昼過ぎに着くので、出国した10月の夜はオペラ(幸い喜劇【セビリアの理髪師】)を楽しめた。
 これに先立ち、同年6月末はターキッシュエアラインズでジュネーブ空港に降り、8日間有効のスイスパスで巡り、「スイス悠々」6回シリーズを執筆し得た。自身、全く想定外の人生になった。
 関空を夜離陸する3社(現時点で、残念ながらカタール航空は関空から撤退)比較では、トランジット時間が短く、午前中に現地に到着し、復路も夕刻に離陸するターキッシュエアラインズの利点が大きい。2016年5月も同社#を用いた。(#:その後、テロやクーデターが断続し、残念至極)

 2016年5月23日土曜日午前中にウィーンに着陸。近郊線で(映画〔第三の男〕で著名な大観覧車があるプラーター公園隣接の市内基幹駅)プラーターシュテルン駅から至近のホテル(アドロン)に入り、スーツケースを預け、市内に出発。[この界隈の三ツ星ホテルは、空港からの利便性が良く、ランドマークがあり、分かり易く、格安であるためオススメです。充実した内容の朝食付。購入はBooking.com]
 生活時間帯は施錠が外される集合住宅間のパッサージュを通り抜け、プラーター大通りへ。ワルツ王ヨハン・シュトラウスII世の住居跡(2階が博物館・1階はカフェレストラン)を過ぎると地下鉄1号線ネストロイプラッツ駅。市内行に乗車すると、隣駅が運河沿い(のシュヴェーデンプラッツで、ドナウ川クルーズ、ブラチスラヴァを結ぶTwin City Linerの桟橋があり、ハイリゲンシュタットとシェーンブルン宮殿を結ぶU4駅でもあり、地上階は路面電車の基幹駅)、二つ目がシュテファン大聖堂のあるシュテファンプラッツ駅、三つめが国立歌劇場やウィーンフィルの本拠地〔楽友協会〕至近駅のカールスプラッツ、五つ目が新築・開業して間もない中央駅で、利便性に恵まれている。

国立歌劇場(左)。定演のチケット3枚を手にウィーンフィルの事務所前(中)。ウィーン楽友協会(右)

 2016年5月に到着した夜は、小生は国立歌劇場でワーグナーの【ローエングリン】の単独研修ゆえ、淑女二人で市内中心部(国立歌劇場)とホテル間の行き来が出来るように配慮した。チェックイン時刻前にホテルに戻ったが、途中、現地のスーパーマーケット〔SPAR〕での買い物体験も済ませた。
 ホテルチェックイン後、シャワーを浴びてさっぱりし、正装して出発した。目的は15時開演のウィーンフィル定期演奏会。ウィーンフィルの年間定期会員になるには10年以上待つことになるが、一方、何らかの事情でチケットが使われない場合は、事務局に委ねる文化が根づいている。これにより、空席とするのではなく、愛好家にチケットが譲られることになる。
 2012-3年当時は、事務局にメールをして定演のチケットを得ていたが、新たな体制が構築され、メール授受ではなく、ウィーンフィルのホームページでの直接購入となった。それも(通例であった)1週間前ではなく、2016年は出国4日前に・・・。かつ、メール授受では可能であった座席希望を伝えての購入ではなく、価格帯を選択し、自動的に座席が決められる方式であった。躊躇したが、中間価格帯の65 EUR で3席を選択した。高価格帯は1階平土間席になる可能性が高く、小生はそれを好まないので、運を天に任せての購入であった。得られたのは“Orchester オーケストラ”席。馴染みがなかった。座席図♪で見ると1列目3・4番、2列目7番が配席された。結果?!
 座席図と実際は異なっており、国内では体験できないVIP席だった。1872年に建てられた楽友協会“黄金のホール”と称せられる大ホールは音響が秀逸であることでも著名で、後年建てられたコンサートホールが目標としてきたことでも知られる。
 2012年以降、舞台後方の2階席(バルコニー)・3階席相当の(ギャラリー)でのみ聴いてきたが、初体験の“オーケストラ席”は、視覚的に稀有で、音響においても秀逸であって、感嘆した。
 まずは、視覚面。同伴の彼女らは目の前に第一バイオリンの後方演奏者が座り、右を向けば、指揮者の横顔が見える。指揮者が第一バイオリンを見て指示する際は、その表情・仕草を、彼女らはまともに体験することになる。つまり、指揮者の表情・眼光を真っ直ぐに見る位置になる。実際、中間休憩における彼女らの感動表現がそうであった。とくに、指揮者が、今や大御所的な眼光鋭いクリストフ・エッシェンバッハとあって、彼女らは彼のエネルギーを感じ取ったに違いない。
 小生は二段上がった最前列(段差が大きく2段で1m位、チェリストの後)で、指揮者の表情・手の振りを見続けることが出来た。座席は固定されておらず、自身で若干位置を動かし、指揮者を正視する角度にしたこともある。前方は、平土間の客席、側方バルコニー席、後方正面のバルコニー席とギャラリー席を見通し、左後方、即ち、舞台後方はパイプオルガンが近く、右側至近の側壁の手が届く位置には大きな黄金の女神像!
 音響的には、例えば、梨花ホールでは、舞台の音は客席に届き、舞台においては周囲の演奏音が聞き取りにくく、ましてやホール音は聞こえてこない。ウィーン楽友協会“黄金のホール”の場合は、直接音もだが、ホール音の響きが良く、かつ、後方バルコニーやギャラリーより近く、音の大きな塊となって響いてきた。聴くまでは、全く想像し得なかった感動体験となった。

自席から“黄金のホール”の展望。同伴の二人は L3,4席(左)。黄金の女神像に接した自席でチケットを手にして(中)。ザイフェルト氏と共に(右)

 演奏曲冒頭は、学生時代から聴き慣れた(マンドリンクラブでも編曲版を演奏した)ベートーベンの【エグモント序曲】で、ウィーンフィルの特上の音色・演奏を堪能し至福感を味わった。本曲は弦楽器が重厚に響くのだが、いわばウィーンフィルの真骨頂と評せる演奏だった。“音の風景”と評して、妻などに話している。この日のエグモント序曲も、生涯を通じて忘れることのない“音の風景”になった。
 前半のメイン曲、ブラームスのバイオリン協奏曲(独奏はリサ・バティアシュヴィリ)が終わった後、自席のオーケストラ席界隈で3人が話していたら、第一バイオリンの重鎮であるザイフェルト氏がステージに戻ってこられた。簡単な確認作業と見受けたが、近づいてこられた際に声をかけた。
 実は、ウィーンフィルの第一コンサートマスターであるライナー・キュッヒル氏主宰の〔ウィーン・リング・アンサンブル〕が、3年連続で来鳥し、ニューイヤー・コンサートを梨花ホールで行っている。2・3年目はボランティアで支援活動したことで、共に飲食する機会も得た。3年目は、演奏会後の翌朝、鳥取駅前のホテルを発つ9人をお見送りに出かけ、小生を交えた10人での記念写真が残っている。
 ザイフェルト氏は、3年連続で公演した鳥取を覚えておられた。20余年ぶりの記念写真に結実した。

指揮者クリストフ・エッシェンバッハが団員を称える様子を自席で撮影

 後半も馴染みのシューマンの交響曲第2番で、秀演だった#。舞台から団員が退いた後も拍手が止まず、指揮者のみ再々登壇した。
 ウィーンで(無料の)ネット会員登録をしているのは、(旧“宮廷歌劇場”の)国立歌劇場と“市民・大衆歌劇場”であるオペレッタの殿堂フォルクスオーパー、そして、楽友協会、コンツェルトハウスとウィーンフィルである。チケットの購入に関して、各々の違いがあるので、アナタが利用される際のために記述しておく。
 楽友協会“黄金のホール”とコンツェルトハウス(大ホール、中“モーツァルトホール”、小“シューベルトホール”)は、座席図を見ながら、好みの席を購入できる。(無料会員の発売開始は、有料会員の1週間後だが、良席が得られる。少なからずVIP席も得られるが、有料会員が不都合の場合に事務局にチケットを返す文化が定着している証である。コンツェルトハウスの大ホールはバルコニーが低い。ギャラリー最前列中央席が小生評価の最上席である。2016年5月のウィーン交響楽団演奏会も同席が3席連番で購入できた。)ウィーンフィルは主催の定期演奏会の際に、既述の通り役立っている。
 ウィーン国立歌劇場とフォルクスオーパーは、価格帯を指定しての「予約」となる。クレジットカード情報も入力して操作を完了するが、その時点で席の購入は確約されない。購入スタンバイ(Stand by ticket)状態に留まる。担当者による“配席”作業の結果、配席決定通知メールが届かないこともある。つまり、不確定要素があり、困惑することも再々である。一方、“最前列席”を指定することも可能であるが、当然、人気演目やスター歌手が出演する際などは、(有料会員優先の配席になるので)ハイリスクで、配席に至らない懸念がある。
 配席決定メールが届くと、これを受領するか否かについて、意思表示をする作業が必要になる。通常、是として、購入を決定する。数回は、小生が指定した購入価格帯の1ランク上(自己評価で最上!)の席が配席されることもあった。バルコニー正面の最前列席であり、それでも約130EURゆえ、来日公演(65,000~67,000円/ 2016年10月)とは比較にならない安価である。
 時系列的に、先の公演の配席決定メールが届き、近日分が届かないこともあった。メールで問い合わせると、(決して、固有名詞を出さないが)「スター歌手が出演するので、“最前列席”の限定を解除し、かつ、購入価格帯の幅を広げよ」と言った返信も経験した。
 2016年5月の椿姫こと【ラ・トラヴィアータ】然りで、プラシド・ドミンゴが要役で出演する公演もそうだった。最前列をあきらめ、価格帯を拡げ、「とにかく聴ければ良い」との思いだった。単独行の際は、立見席に数時間並ぶことも厭わないが、は淑女二人を連れていたので、彼女らに事情を話し、了解を得、小生とは別に購入手続きをした。結果?!
 バルコニー正面の最前列席1席が小生に配席された。彼女らには配席はされなかった。
 なお、公演日が近づき、空席がある場合は、座席図を見ながらの座席購入も可能になる。が、しかし、小生が指定する価格帯(95~105 EUR)は、完売であることも多く、最前列席は無い。

楽友協会“黄金のホール”ギャラリー最前列席 (左)。国立歌劇場バルコニー最前列中央席 (中)。コンツェルトハウスのギャラリー席最前列中央席 (右)

 国立歌劇場の配席は、概して早いが、フォルクスオーパーは公演日がある月の前月初旬に配席される。国立歌劇場の演目、“黄金のホール”などの演奏会内容に恵まれない場合、モーツァルトの【魔笛】など著名なオペラや馴染みのオペレッタが上演される際に、フォルクスオーパーを選択する。気楽で楽しい。チケットは安価だが、これも来日公演となれば、39,000円(2016年5月)であり、3万円以上の差額が出る。小生にとっては、ウィーンは美味しい!
 オペラ、演奏会が主たる“生涯研修”の小生であるが、昼間は、近郊に日帰りで出かけ、或いは、美術史美術館や数多い公園・庭園の散策など、堪能している。


 シリーズ2回目からは、アナタへ、それらのご案内・誘いです。

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