ドナウ川の景勝地であるヴァッハウ渓谷をメルクからデュルンシュタインまで観光。乗船したPrinz Eugen、デッキでの様子・風景
ウィーンを愛して(6)トラム・列車・船とポストバス
トラムは丸みを帯びた旧車両とバリアフリーで連結車内が自由に移動できる新型車両が走っている。左から、トラムD線の旧車両、接続部の連結器、新型車の顔、同車内の連結部分、新型車の側面とトラム駅の看板
2011年に一人でロンドンを巡った際も、鉄道ファン的行動(鳥取県東部会報No.400「ロンドン点描6」)をしたが、今回のウィーンでも乗り物を楽しんだ。
1.ウィーンの市内交通
ウィーンの市内交通はWIENER LINIEN(www.wienerlinien.at)が秀逸で、机上旅行にも資する。英語頁を選択し、左上の検索枠の右下Advanced searchをクリックすると“鬼に金棒”となる。ちなみに、Landmarkをチェックし、今回連泊したホテル名Prinzを入力した時点でHotel Prinz Eugenが出るので選択する。目的地を同様にLandmarkとして、市民歌劇場(フォルクスオーパー)と仮定しVolksoと入力するとWien, Volksoperが出るので選択する。後は、日時・発着を選択し、More optionで(地上交通で市内観光をすることにして)地下鉄を除いて検索する。数通りの交通手段が出るが、ここではホテルから300m歩き、ベルヴェデーレ宮殿前の四つ角(Quartier Belvedere)でトラムD線(の南端起点#)駅での乗車とする。トラム駅の具体的な場所はOverview map(PDF)で確認できる。同様に、乗換駅も概要地図での確認が出来る。より詳細な地図での確認は、例えば、トラムを乗り継ぐSchottentorをGoogle地図に入れる。北西方向に目的地Volksoperがある。
選択したルートは、トラムD線がリンク通りを走るので、国立歌劇場、王宮・王宮庭園、美術史美術館、自然史博物館、市庁舎、ブルク劇場など、名所の車窓観光を兼ねることにもなる。[#:北端駅はハイリゲンシュタットでベートーベンの小路が至近]
2.オーストリア国鉄
ウィーン市から離れる場合は、オーストリア国鉄(OBB)のHP(www.oebb.at/)を英語版にして列車等を検索する。例えば、メルク修道院、ドナウ川(ヴァッハウ渓谷)下り、クレムスからウィーンに戻る日帰り旅行の場合、ウィーン西駅からメルクに国鉄で移動する場合の実績であるが、HPに出発地(From:)にWien Westを入力するとターミナルのウィーン西駅(Wien Westbahnhof)が得られる。目的地(To:)にMelkを入力するとメルク鉄道駅(Melk Bhf)がヒットする。出発日時、例えば、8:40発で検索(Search connectionをクリック)すると、Wien Westbahnhof発 8時56分(dep 08:56)9番ホームで国内特急列車(OBBIC OIC690)に乗車し、ザンクト・ペルテン駅(St.Polten Hbf)5番ホームに9時28分に到着(arr 09:28)する。さらに、隣の4番ホームで地域列車(R R7012)つまりドン行に乗り換えると所要18分で、9時57分(arr 09:57)にメルクに到着すると分かる。要するに10時前のメルク到着を設定してのことで、所要1時間1分で毎日運行(Duration: 1:01;runs daily)であることの確認もできる。
なお、列車番号をクリックすると、全路線の停車駅と各々の発着時刻とホームが分かる。ウィーン西駅始発のOIC690は、市内交通の要所に相当するWien Hütteldorf に停車する。西駅からヒュッテルドルフまでは、例えば、新幹線が東京から品川まで低速で走るようなもので、その後は速度を上げ快走する。
Show map をクリックするとウィーン~乗換のザンクト・ペルテン~目的のメルクまでの走行路線図が示される。さらには、例えば、ザンクト・ペルテンをGoogle Maps等で確認する。同市の西側方向に鉄道を追うと、ドナウ川が地図に現れた時点で目的地メルクの位置が確認できる。ドナウ川を下ると、デュルンシュタインなどが分かる。
本稿はネットで確認しつつの記載だが、自由旅行を支援してくれる便利な時代になったとの実感を、今新たにしている。インターネットが普及し始めた当時は、日本に比べて西欧の遅れを感じていたが、今日では、少なくとも自由旅行支援の観点では、日本がかなり拙い。
さて、電気機関車が牽引する国内特急OIC690の編成は、発車前に座席確認を兼ねて車内探索したが、荷物車が連結されており、旅行者の持ち物と分かる自転車も積み込まれていた。列車に自転車を“同乗”させるのは、日常的なことで、都市部で自転車専用路が整備されていることと合わせ、うらやましく感じた。横3列の一等車の連結があり、車掌に尋ねると、国際列車では定番の食堂車の連結は(国内特急ゆえに)無く、売店・車内販売があるとの回答だった。二等車は、通常の中央通路・横4列の座席車と寝台車風の壁面通路、横3列の車両があった。後者に座した。一つのコンパートメントに、オーストリア国鉄のシンボルカラーである赤の列車番号が記された資料があり、中に停車駅名と時刻が印刷されていた。1994年にウィーン西駅からザルツブルクを往復した際にもこの資料はあった。優れたサービスが定着・継続している。
オーストリア国内特急は特急券が不要で、自由な乗換えが可能であることもありがたい。車内資料で、乗車した国内特急の終着が14:43 Villach Hbfとある。手持ちのガイドブックにある地図で、オーストリア西部・チロル方面を探すが探し得ない。車内検札の際に、車掌に地図を見せて尋ねたら、フィラッハは南部でイタリア・南欧への交通の要所と分かった。ウィーン西駅発、行き先をフィラッハとしてOIC690の走行路線をShow map で展開するとリンツ、ザルツブルクを通過し、ザルツカンマーグート地方を南下し、オーストリアアルプスを抜けて、イタリア、スロベニアとの国境に近い交通の要所に、所要5時間47分で到着すると分かった。車窓を想像し、心がときめく机上旅行です。
なお、ウィーン西駅のホームに入る際には改札口がなく、メルクでも集札口がない。唯一、車内検札のみであり、この時点で適正な乗車券を有していないと、ペナルティが科せられ、困ったことになる。
ウィーン西駅から乗車した国内特急列車:最後尾、2等車内、ザンクト・ペルテンで下車し、乗務員と記念写真
3.All-in-one Tickets
メルク方面の日帰り旅行について調べたら、「All-in-one Tickets」の存在を知り、ウィーン西駅で購入した。[TRAIN + SHIP + ABBEY MELK]、つまり、ウィーン~メルク~メルク修道院~ドナウ川ヴァッハウ渓谷の船~クレムス~ウィーンがセットとなった企画券が45.6 EUR#とお得で、かつ、各々購入する手間を考慮すると便利でもあった。
1994年10月に、夫婦で初めての海外旅行でオーストリアを訪れた際には、情報が乏しく、各々の乗車券を出札窓口で購入したが、隔世の感を抱く
(#:60歳以上2割引価格。各々を窓口で購入すると計63.8 EUR)
ドナウ川で最も美しいとされる世界自然遺産ヴァッハウ渓谷の絵葉書スポットはメルク修道院、デュルンシュタインや古城と川沿いのワイン畑である。なお、オーストリアでは、アイゼンシュタット方面と当地ヴァッハウ渓谷がワインの二大産地である。
デュルンシュタインは教会の青い塔が象徴で、約18年前に訪問した際は、秋の夕暮れが早いこと、情報が乏しかったことで、下船できなかった。情報を得ていた今回は、デュルンシュタイン下船した。ただし、下船すると、「All-in-one Tickets」から外れ、ウィーンに戻る際の基点となるクレムスまでの移動は実費となる。
同日は19:30からウィーン・コンツェルトハウスでゲフギエフ指揮・ロンドン交響楽団演奏会のチケットを入手済だったので市街には18時過ぎには戻りたかった。検索すると、デュルンシュタインからクレムスまではポストバス、ウィーンにはドナウ川に沿い北側に位置するフランツ・ヨーゼフ駅に地域快速列車での移動が示された。
デュルンシュタインで下船した後、限られた時間を有効に使うために、鉄道ダイヤを調べたが、願いとする時間帯にヒットせず、バスダイヤが提示されるのみであり、怪訝に思った。止むを得ず、ポストバスを用いることにしたが、初めて訪れる田舎であり、鉄道駅と比べると分かり難いバス停Dürnstein/ Wachau Parkplatz Ostの場所を確認して出国したかった。デュルンシュタインの公式HP(www.duernstein.at/)で同Tourist Informationのメールアドレスを使い、問い合せて、バス停の場所を確認し得た。
それでも、分かり難い小さなバス停だった。一旦は行き過ぎたと分かる鉄道駅の道路標識に行き着いた。尋ねて、引き返し、バス停を見出した。日帰り旅行者にとって、(日本的常識で道路渋滞で遅滞が懸念される路線バスより)確実で安心できる鉄道の情報がネットで得られなかった訳が、現地に来て分かった。
若干の時間を活かして、花で飾られた小さな鉄道駅舎に行くと、壁面掲示されていた運行表に、何と1日に3本のみの列車であった。日本では、どんなローカル線でも10本程度は運行されていよう。目的地(Krems an der Donau)行のポストバスに乗り、運転士から乗車券を2.5 EURで購入し、座席に着いた。国道ではなく、ポストバスならではの生活道路を、ワイン畑の間や集落の中の通りを走り、所要18分、定刻に到着した。
クレムスからウィーンへの帰路に乗車した地域快速列車“City Shuttle”は、予想外に立派だった。全車2階建てで、先頭車両の顔には凄みを感じた。2階に座した。閑散とした車内でウィーン到着まで相向いの4席を独占し得た。山間部の畑作・牧草遅滞を走る往路と異なり、ワイン畑、ドナウ川沿いの景観が楽しめた。
デュルンシュタインの象徴である塔とドナウ川・ワイン畑
クレムスから乗車した総二階建ての地域快速
4.ポストバス
西欧を自由旅行する際に、地下鉄でなく、バスが使えたら一人前的な記述がガイドブックにある。地下鉄・トラムや大都市近郊線から外れる地域には鉄道が分かり易いが、今回、アイゼンシュタットからルスト方面の日帰り旅行はポストバスを主体とした。概要は「ウィーンを愛して(2)心地良い朝の散策が嬉しくて」に記述しているので、本稿では長距離ポストバス乗車体験について記載する。
鳥取に暮らす小生が抱いている路線バスのイメージは渋滞遅延・交通過疎地・・・。オーストリアでは、都市圏ではバス専用路線が整備され、鉄道との一体経営でもあり、運行は正確である。鉄道と同様に(本稿2項)扱われており、バス停は[Station]欄に駅名表示され、かつ、列車番号同様のバス番号を確認すると各駅における発着時刻が明記されている。
日帰り旅行をしたこの日、ウィーン始発のバスターミナルからアイゼンシュタット行に乗車[所要80分]し、同地からルスト[24分]まで、そして、ルストからの帰路は、もよりの鉄道駅至近のポストバス駅[10分]まで、計3系統に乗車したが、どれも正確な運行だった。バスの場合、バス停の場所と運行系統が分かり辛いが、これらの情報もオーストリア国鉄のHPに示されていた。
ちなみに、日曜日にアイゼンシュタットを発ちルストに行く場合、オーストリア国鉄のRoute Planner(本稿2項)で、出発地(From:)にEisenstadtを入れ、行き先(To:)にRustを入れると「RUST AM SEE」つまり、世界自然遺産のノイジードラー湖畔のルストが得られる。旅行日と出発11:00を入れて検索すると、[Station:Eisenstadt Domplatz 3番ホーム dep 11:00発、バス番号765、Rust am See Postamt着11:43]と分かる。さらに、発着の駅名をクリックすると各駅の地図を得ることが出来るし、「Show map」をクリックすると運行路線図が(各々ズーム機能付で)得られる。さらには、バス番号をクリックすると始発から終着までの駅と発着時刻が、検索した区間は赤く強調されて出てくる。至れり尽くせりで、海外からの自由旅行者にとっては非常に有り難い。
鉄道と同様の運行情報が得られ、かつ、ダイヤ通りに運行されるポストバス数路線の乗車体験から、日本と異なる公共交通機関のあり方における文化の違いを感じると共にオーストリア国鉄の“誇り”を感じた。
交通面における日本の遅滞・不備を強烈に体感研修し得るので、旅行愛好家の諸氏はお試しを!
鉄道・バスのダイヤは 2013年6月2日現在
ウィーンからアイゼンシュタットへ向かうポストバス:モダンなデザインの運転席、田舎の一般道、花で飾られたポストバス駅、村の入り口にあったロータリー、アイゼンシュタットで乗り換えてルストに到着(右)