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ブラチスラバ城の外観 (左)。城から眺めるドナウ川と地平線(中)。散策路から見上げたブラチスラバ城(右)

続 ウィーンを愛して(8)日帰りでブラチスラバ

 オーストリアの東端部にあるウィーン、スロバキアの西端部にあるブラチスラバの両首都は約60kmの至近地にあり、どちらもドナウ川沿いに立地し、ドナウ川には高速船TWIN CITY LINER(TCL)が定期運航しています。
 学生時代ヨット部に所属し、還暦記念にカヤックを始めた小生は、船で巡る旅は好きで、TCLには乗りたい願望があります。ぜひ、アナタもご一緒に!
 TCLは水を吸い込み噴き出す勢いで航行する双胴の高速船で、鉄道(10.30EUR / 所要66分)と比べると価格が高く(平日 30.00 EUR、土日祝日 35.00 EUR / 所要時間は往路75分、上流に向かう復路90分)、一方、小生は鉄道ファンでもあり、片道は鉄道としましょう。
 ウィーンからブラチスラバへの日帰り旅は、時間的なゆとりがあり、夕刻にウィーンに戻れるので、19時30分開演の演奏会のみでなく、開演時刻が早い国立歌劇場のオペラにも間に合います。
 さて、初めて訪れるブラチスラバです。往路と復路、どちらを鉄道、船にしますか? ・・・・・
 ブラチスラバのドナウ川の桟橋は、当然とも言えますが、鉄道駅よりは低地にあります。かつ、駅から下りながら雄大なドナウをめざせば良いので、大きく迷うことはありません。逆に、往路は船、復路に鉄道を選択すると、初の訪問地であり、着実に駅に到着する上で懸念を抱きます。
 と言うことで、往路は鉄道としましょうね。かつ、夜の演目に備えて、復路のダイヤを確認し、逆算して出発を決めましょう。
 さて、ウィーン国立歌劇場でビゼーの【カルメン】を想定します。上演日の曜日により変動しますが、例えば、開演は18時30分です。観劇中に昼間の疲労から眠気を来しては困るゆえ、ブラチスラバで過剰に歩き回ることは避けたいので、配慮しましょう。
 まず復路の選択を。
TWIN CITY LINERのHP(twincityliner.com)を見ると、ブラチスラバ発14時と16時があります。ウィーン・シュヴェーデンプラッツ桟橋着は15時30分と17時30分で、同桟橋の隣接地に地下鉄1号線駅があり、国立歌劇場至近のカールスプラッツ駅は2駅目、所要3分です。

中央駅で地域快速に乗車。伸びやかな田園風景(左)。ブラチスラバ中央駅前(左中)。大統領官邸裏の公園:マリア・テレジアの騎馬像と憩う若者たち(中)。朽ちた一対の像(右上)。大統領官邸の正面と要人の到着(右下)

 次いで、往路です。オーストリア国鉄ÖBBRoute Plannerで調べると、ウィーン中央駅始発8時16分、ブラチスラバ中央駅(Bratislava hl.st.) 9時22分終着のREX(Regional Express 地域快速)があります。両首都間は特急が無く、運賃は(「早割」等がなく)固定価格なので、当日の購入が可能です。復路は、可能なら14時出航のTCLとし、仮に満席なら16時出航便で、これも満席なら、復路も鉄道を利用します。ブラチスラバ中央駅15時38分発と16時38分発があります。安全第一の計画です。
 ブラチスラバ滞在は約4時間で十分です。14時出港のTCLに乗船できない場合は、約6時間の滞在になります。天候や体力・関心などを含め、前日に催行を決定しても良いでしょう。
 以下、2013年5月に訪れた際の紀行です。催行時の参考になりましょう。
 ホテルで朝食を十二分に摂り、ウィーン中央駅へ。REXは南東方向に出発後、反時計回りに走り、ドナウ川を越え、北東へ転じて市内を抜けると、田園地帯を東方へ快走します。内陸国ですが、田園地帯が広がり地平線となっている風景に驚きます。日本ではまず体験できない地平線です。風力発電地区も通過し、やがて東南東方向へと走ります。停車した途中駅のホームはとても低く10cm程度で、線路間には雑草が生え、架線が消えているのにも気づきましょう。寂れた印象を覚え、スロバキア国内の現実を感じます。再び、架線が見える頃、ブラチスラバ旧市街の北側に位置する中央駅に到着です。
 駅舎内には見慣れぬスロバキア語の文字と、天井付近に[WELCOME TO SLOVAKIA]と大きな英字看板があります。高架前の鳥取駅を思い出す規模と駅舎内の雰囲気で、華やかさはありません。
 駅前広場に出ると架線があり、トロリーバスが停車しています。舗装されていますが、ひび割れが目立ち、付近の歩道横のコンクリート製のプランターには雑草が生え、ベンチ座面の木は朽ちていました。
 観光客はツアーバスで旧市街に出入りするためと思え、中央駅前なのですが、整備が遅れています。ウィーンとの違いに驚きながら、旧市街に向け、南へと歩き始めます。
 約200m方形のNámestie slobody(Freedom Square)に入り、中心に噴水がある円形広場界隈を散策後、西側に隣接する緑豊かな公園内に入ると、家族連れや若者たちの微笑ましい様子を目にし、心が和みました。大きな樹木に抱かれた環境の中、立派な騎馬像に気づき、錆びたプレートには[MARIA THEREJIA]とあり、見上げると、見覚えのあるマリア・テレジアです。南正面には、奥の立派な建物を守るように、高さが約4~5mあるアーチ状の透明な塀が設置されています。
 公園を西側に出る際、女神を思わせる2つの石像が見えるので、歩みましょう。近づくと顔の表情が不鮮明なほどに劣化しており、立派な建物、整備された公園とのギャップに驚きます。通用門からトロリーバスが走る道路に出て、南に少し歩くと、大きな広場となり、立派な建物は何と大統領官邸!
 二人の衛兵が立ち、中央玄関には赤い絨毯が敷いてあり、丁度、高級車が入り、要人と思える男性が一人中に入りました。離れて、建物全体を撮ろうとしたら屋根に旗が・・・。スロバキアの国旗!
 調べると、散策した公園はPrezidentská Záhrada (Presidential Garden)でした。大統領官邸の北側、ごく僅かの土地が円弧状の透明な塀で囲まれ、緑が豊かな公園の大半が国民に開放されていることに感慨を抱きました。民主化以前の時代は、高い煉瓦塀に遮られ、庶民は敷地内に入れなかったのかも・・・。
 官邸前から南へ歩くと、複数の路面電車路線がある広場に至り、美しい教会と、事前学習で馴染んだミハエル門の塔が見えて安堵します。ここは旧市街入口。優雅で上質な約2km、約1時間の散策でした。

旧市街入口界隈(左)。旧市街点描:ミハエル門(左中)。個性的な像が目を惹く(右中)。振り返って撮った景色(右)

 ミハエル門は旧市街地の入口で、門の界隈から、カフェ、お店などが急に増えてきます。
 こぢんまりとした旧市街は適当に散策します。とは言え、事前学習した地図を思い浮かべつつの散策で、ミハエル門を南の方へ進むとドナウ川に至るので、迷うことはありません。
 旧市街には、多種多様な像が設置されており、観光客を楽しませています。小生も中世の騎士と共に記念に撮りました。中央駅前の荒れた様子と一変し、カフェの雰囲気も良く、通りのテラス席に座ると、日本で馴染みの“ウィーンナー・コーヒー”が目に留まり、注文しました。ウィーンではアインシュペナー Einspännerが該当します。が、日本で一般的にイメージする“ウィーンナー・コーヒー”に、ブラチスラバで出会えるとは、想定外で、嬉しくなりました。
 界隈や観光客を眺めつつ、振り返ってミハエル門方向の記念撮影も・・・。旧市街と中央駅前との大きな違いに、日本やウィーンでは見ない“光と影”をも想いつつ、ひと時を過ごしました。
 カフェで休息した後は、観光客の動きに誘われ、東側に小さな商店街を歩きます。間もなくの突き当りに大きめの教会があり、中に入りました。教会があると、定番的に中に入る小生です。内部の祭壇、絵画、彫像などはとても立派・・・。中庭から見上げる尖塔が美しく、大樹も樹幹が見事でした。[Kostol Zvestovania]なる教会で、帰国後に調べたら、ブラチスラバで最古の歴史ある教会でした。
 教会を出て、時計回りに周回するように歩くと、大きな広場に出ます。主広場です。

主広場・界隈の点描:旧市庁舎(左)。優美な建物(左中)。日の丸の旗~日本国大使館が入る建物とブラチスラバ最古のローランド噴水(右中)。噴水の近くで語らう観光客(右上)。界隈にある立像との戯れ(右下)

 長方形の主広場は、パステルカラーの優美な建物で囲まれています。東北端に美しい塔がある建物は旧市庁舎を構成し、ブラチスラバ最古の建物であると知りました。日本国旗が掲揚してある日本国大使館が入っている建物もあります。広場の中央南には同最古の噴水があり、ベンチに座して語らう人も・・・。
 観光客が目立つ主広場にしばし佇んだ後、南西側に抜けるお店が並ぶ道に入ると、銀色で左手にシルクハットを持つにこやかな表情の彼に誘われました。至近地でソフトクリームを購入した小生、彼にも「舐めて良いよ~」と差し出しての記念写真!
 界隈では、ミニトレインの通過や、停車し観光客が乗降するのを目にします。
 西方向に歩くと、大きな教会が・・・。残念ながら、中に入る入口が見出せず、見上げつつ外観を撮るに留まったのはマリア・テレジアが戴冠式をした聖マルティン大聖堂でした。
 ドナウ川方向に抜けると両側に樹木があり、モニュメントが散在し、東端に立派な建物(旧国立歌劇場)がある通りに出ます。各種のお土産類を並べた屋台が並ぶ一帯となり、観光客も集っています。
 タクシーが停まっていたので、高台にあるブラチスラバ城まで乗ることにしました。
 高台にあるブラチスラバ城まで歩けないことはないのですが、夜のオペラに備えて体力温存と、往復が同じ路の散策になるので、時間効率を考慮してのことです。

ブラチスラバ城の外観 (左)。城から眺めるドナウ川と地平線(中)。散策路から見上げたブラチスラバ城(右)

 四辺の一辺を歩く散策路と異なり、タクシーは反時計回りに大きく迂回する自動車道を快走し、高台にある城門前で停止します。観光客相手で、高く感じた料金を現金(ユーロ)で支払って下車しました。
 囲碁盤・将棋盤をひっくり返した形状のブラチスラバ城は、自身、内部には関心がなく、景色を楽しみます。幸い好天に恵まれ、風もなく心地良い環境の中、ドナウ川や地平線に続く田園を眺めました。目を左・旧市街方向に向けるとドナウ川に架かる斜張橋が目に入ります。Nový most (New Bridge)で、南側の主塔の上に円盤状の展望台が設けられ、その形からUFO橋の愛称も(組写真中上・対岸)・・・。
 伸びやかな風景にしばし身を委ねた後、城を見上げながら、散策路を降り始めます。順光で、快晴の澄んだ青空と城のコラボが美しい・・・。
 名残を惜しむように、立ち止まりつつ、景色を眺めながら、旧市街に続く散策路をゆっくりと歩きます。路地の正面に聖マルティン大聖堂が見えます。アングルも良く、素敵な撮影スポットです。
 聖マルティン大聖堂前に出た後は、ドナウの河畔道路に降ります。大通りである河畔道路には広い歩行者道が整備され、緑豊かな樹木と共に、植栽された花々も綺麗です。立ち止まり、Nový mostを見上げ、或いは、河畔道路向かいの立派な宮殿などの建物にも目を留めて・・・。
 やがて、めざす桟橋が見えます。丁度、Twin City Liner (TCL) が停泊していました。
 この頃13:45頃で、14時出航のTCLへの乗船をと、少し急ぎ足になりました。ターミナルの建物を確認し、窓口に少し並んで、片道のチケットを買い、桟橋で記念写真を撮り、乗船しました。
 小生のVIP席は後甲板です。高速艇なので、前方には立てませんし、屋外席もありません。全席指定の客室内は、窓で景色が制約されますし、あなたもいっしょに後甲板に立ちましょう。

復路はTWIN CITY LINERでウィーンへ:専用桟橋と旧橋(左上)。出港直後の桟橋とターミナルビル(左下)。速度を増した双胴船の船尾から見た景色(中)。船上から眺める美しいブラチスラバ城と聖マルティン教会(右)

 2隻のTCLが停泊しており、出航直後に良いアングルで僚船とターミナルビルが撮れました。
 TCLから眺める川面からの景色は一変し、臨場感に浸ります。聖マルティン大聖堂、高台のブラチスラバ城を優雅に眺め、せっかくの機会なので、望遠撮影(組写真右下)もしましょう。
 ブラチスラバ城が見えなくなる頃、TCLは最高速に達しています。水流が吹き出す方向を調整することで、蛇行するドナウに合わせ、進行方向が変わります。調べると、TCLはmax. 70km/h.、cruising speed 32.5 knots (60 km/h)、船長33.7m、船腹8.5mなどの情報がありました。
 緑が多い両岸の目に優しい風景に和みます。大きな岩山と古城、河畔の街と教会の塔、そして、ドナウ川を航行する運搬船との遭遇や、稀に橋梁、水道橋がアクセントをもたらします。TCLが急に減速しました。理由が後甲板にいると分からず、船腹から前方を覗き込むと、運搬船が航行していました。TCLの航跡が吃水の低い運搬船の航行に支障を来さないように減速したのだと判ります。
 後甲板に居続けていると、船客が入れ替わります。人目に付きにくい場所に立つアベック、船尾で記念写真を撮る人、時には子どもも・・・。
 TCLは、途中の桟橋に停まることなく、目的地ウィーンのシュヴェーデンプラッツに向かいます。

船上からのドナウ川点描:古城(左上)。双胴船に特異な航跡(左下)。後甲板で記念写真を撮る女性と乗客の自転車(左中上)。自然護岸の綺麗な風景(左中下)。ドナウ運河の船首風景(右中)。シュテファン大聖堂の尖塔(右)

 やがて、TCLは明らかに速度を落としました。ドナウ本流から運河に入るようです。
 南から北方向へ、蛇行する運河を航行します。船内に入り、船首風景も楽しみましょう。
 本流での荒々しさを感じる航行と一変し、ゆっくりと静かに進みます。多様なデザインの自動車橋、鉄道橋をくぐり、やがて建物が増える頃に、ウィーン中心部のランドマーク、シュテファン大聖堂の尖塔に気づきました。間もなくシュヴェーデンプラッツに到着します。
 TCLの船旅は終わります。かなりの流速があるドナウ本流を上流に向かうブラチスラバ発は所要90分、ウィーン発の下りは75分の所要ですが、本クルーズ体験はTCLが頑張る復路がオススメです。
 そう、アナタと再訪する際も、往路は鉄道、復路はTCLとして、シュヴェーデンプラッツでお腹を少し満たして、夜は国立歌劇場でのオペラや楽友協会などの演奏会を研修しましょう!。

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