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メンヒスベルクの丘から眺める旧市街の景観(左)は、ホーエンザルツブルク城、大聖堂や祝祭大劇場Fなど、素晴らしい。崖上の小路を少し歩き、ブラシウス教会の塔Bの下は、観光客で混雑するゲトライデガッセで、モーツァルトの生家Mがある(中)。界隈の小路沿いの山野草(右中下)。蔦が綺麗なブラシウス教会B(右)

続 ウィーンを愛して(5)ザルツブルクへの日帰り

2014年当時はウィーン西駅始発の Railjet(RJ 左)。座席には1994年当時と同様、列車番号と停車駅の到着・発車時刻、詳細な乗換情報が掲載された資料が配置されていた(左中上)。RJ車内のキッズコーナー(同下)。高速専用線を走行中のRJ車窓からローカル列車が見えた(右中上)。見逃せないドナウ川沿いの車窓風景(同下)、専用機でのエスプレッソ珈琲(2.20 EUR)や、RJ車内モニターでは走行路線案内図の表示も楽しめた(右)

 ザルツブルクの初体験ですか?
 1994年10月上旬です。1990年に鳥取市の第1回勤労青年海外研修の団員として、初めての海外旅行が西欧であったことが端緒で、願いが毎年続いていました。4年目には、妻があきらめ「一人で行って来たら!」と。当時、高1の娘が「お母さんも連れて行って!」と進言したことで、夫婦での初体験が実現しました。当時は西欧のネット情報は乏しく、旅行業者の企画を探しました。
 航空機、朝食付ホテル6泊とウィーン~ザルツブルクの往復乗車券付のJTB企画が17万円余であり、決めました。結果的に、「お母さんを連れて行くから、良いホテルに泊めて」の娘の圧力で6万円ほど高くなり、かつ、関空未完成の当時は成田空港発着で、東京往復と前泊にも費用がかかり、一人30万円余になったのです。近年、二人で60万円ほどのJTB領収証が出て来たのを見て、高かった・・・。
 2泊後、西駅からザルツブルクへの移動は特急でしたが、当時はウィーンの森の丘陵地を蛇行して越える路線で、峠界隈では新雪も見ました。その後、約20年が経過した2014年に単独でウィーンに出かけた際は、ネットの超割19.00 EURで、
Railjet(RJ)でザルツブルクに出かけました。乗車したのは、中央駅開業前であり、西駅始発のRJ 160 チューリヒ行(RJ 560 インスブルック行と連結)でした。
 ウィーン市の西外れに位置するヒュッテルドルフを過ぎると、ウィーンの森を長大トンネルで抜ける新線が出来ており、丘陵地の車窓風景を眺めなることなく、高速走行しました。ところで、指揮者 佐渡 裕 が2015年シーズンから音楽監督に就任した100余年の歴史あるトーンキュンストラー管弦楽団の本拠地は、州都であるザンクト・ペルテン市にあり、ウィーンの西方50km余の場所です。
 1994年当時はウィーン西駅からザンクト・ペルテン駅まで、当時の特急で約50分を要していました。現在は、高速線を快走することで、ほぼ半分の時間で到着します。トンネル・直線化で時間短縮は得られましたが、景色は損なわれました。調べたら、旧線には 
REX(地域快速)が西駅からザンクト・ペルテン駅まで走っていました。REXで61分、RJは28分です。ザンクト・ペルテン駅を過ぎると、日本の新幹線と異なり、従来線の走行です。さらに、リンツ駅を過ぎると丘陵地に差し掛かり、カーブも多くなり、速度は上がらず、よって、丘陵や田園風景など、車窓風景を優雅に楽しむことが出来ます。
 RJでは車内モニターで走行地図と列車の位置表示なども出ていました。画面が変わり、225km/h.の速度表示も撮りました。車内販売では専用マシーンを用いたエスプレッソ珈琲も楽しみです。

ザルツブルク中央駅でトロリーバスに乗り、サウンド・オブ・ミュージックのロケ地となったモーツァルト小橋で下車 (左)。同小橋を渡り、ザルツブルクカードを手に記念写真(左中)。旧市街に入り、ケーブルカー麓駅でホーエンザルツブルク城を仰ぎ見て(右中)。要塞鉄道と直訳できる看板と車内で撮った下り車両(右)

 1994年当時は地上にあったホームが、新築された斬新な駅舎と共に高架になっていたザルツブルク中央駅でRJを降りて、駅構内にある市の観光案内所へ立ち寄り、ザルツブルクカードを購入しました。
 2014年の単独行の際、窓口で並び時間を費やしたことから、2016年はネットで3人分の購入をし、日本への郵送をリクエストし、これが適えられたことで、便利になりました。
 本来は、購入済の確認番号を窓口等に示してカードを受け取るシステムですが、ネット購入時に画面設定されているフリー入力欄に「日本に郵送してくれたら嬉しいナ」の願いを、今年2017年5月の3人分然りで、ザルツブルク市観光局が適えてくれたのです。詳細な市内地図とカードの特典を示す資料や「Welcome ・・・」英文メッセージも同封されていました。
 ザルツブルクカードですか? はい。市内交通の乗り放題機能と、ケーブルカーやモーツァルトの生家、大司教の館、ザルツァッハ川の観光船など、名所となっている場所などを1回ずつ体験できる24時間有効のカードで、利便性が高く、割安になります。
 ザルツブルク中央駅前からバスに乗り旧市街へ移動しましょう。バスは今の日本で皆無のトロリーバスです。電車と同様パンタグラフで電気を得ています(組写真左下)。旧市街に入る際にザツツァッハ川を越えますが、直ぐの市庁舎前駅を過ぎ、次のバス駅「モーツァルト小橋」で下車します。
 1965年封切りの映画【サウンド・オブ・ミュージック】のドレミの歌は、ザルツブルク市内の各所でロケされています。モーツァルト小橋Mozartstegもその一つです。
 ザルツブルクを初めて訪れた1994年は、ロケがあった1964年から30年を過ぎていましたが、映画で見たシーンがそのまま残っていることに感嘆したことを思い出します。そして、2014年はロケから半世紀を経ていますが、相変わらず、映画の世界が現実としてあることに改めて感動しました。
 ケーブルカーでザルツブルクの象徴と言えるホーエンザルツブルク城山に登りましょう。崖下の場所と観光客の動き、写真付の看板からケーブルカーの麓駅は容易に分かります。が、看板「Festungsbahn」のドイツ語は馴染みがない・・・。調べたら、「Fortress railway 要塞鉄道」の意味のようです。
 麓駅では、ザルツブルクカードを保有しているので窓口に並ぶことなく、ホテルのカードキーの要領で読み込ませ、緑色ランプがついたらバーを押して進入します。1994年当時の重苦しい車両は一新され、軽快でモダンでした。そう、グラーツのように・・・。
 ケーブルカーは、眼下の景色が“美味しい”ので、見下ろす窓面に立ちましょう。ロープウェイもですが、眼下の景色を眺めるのがオススメです。ええ、スイスでもそうです。観光列車なら展望の良い先頭車がオススメと言うことになりましょうが、山に上がる場合は、やはり下界の景色!

ホーエンザルツブルク城からの景観:左下にケーブルカーの軌道。正面の青屋根は大聖堂(左)。展望台から見上げた城砦(左中)。崖下の祝祭大劇場Fは敷居が高い(右中)。ザルツァッハ川に架かるモーツァルト小橋(右)

 ホーエンザルツブルク城から、世界文化遺産の旧市街を眺める景観は絵葉書の定番です。モーツァルトの父、レオポルド・モーツァルトが演奏をしていた大きなドームの大聖堂は直下に見えます。
 2014年に訪れた際は、ザルツブルクは全日雨天の予報でした。かなりの降雨があった痕跡は路面や手摺に残っていましたが、訪れた時間帯は傘が不要だったばかりか、見上げると青空も垣間見られるほどでありがたい限りでした。はい、幸い小生は晴れ男なので・・・。
 展望所から左手、城塞の崖の下に、夏のザルツブルク音楽祭の主会場として著名な祝祭大劇場(組写真F)が見えます。14時からの内部ガイドツアーもザルツブルクカードが有効で体験できますよ。
 大聖堂の右手にザルツァッハ川に架かる歩道橋モーツァルト小橋も見えます。
 ホーエンザルツブルク城には、大砲の展示やザルツブルクの伝統文化マリオネットで歴史的な場面、映画【サウンド・オブ・ミュージック】や、モーツァルトの【魔笛】の“パパパの二重唱”シーンが音楽と共に展示されているので必見です。私は心が躍ります。
 一方、城館内の見学は肉声によるガイドツアーでの集団行動のみで、時間を要し効率が悪いので、割愛しましょう。代わりに、大聖堂前にある宮殿と言える大司教の館の見学をお勧めします。えぇ、勿論、ザルツブルクカードは有効です。
 ホーエンザルツブルク城からの景観を満喫したら、ケーブルカーで降りましょう。
 観光客が多い大聖堂に入り、館内撮影禁止の華麗なザルツブルク大司教の館を見学した後、少し戻って、聖ペーター教会の墓地へと歩きます。

聖ペーター教会の墓地は、主要観光地の通路になっている観光名所で、各墓が多種多様な花々で彩られ、整備されている(左3点)。崖に掘られたカタコンベから眺める大聖堂(中右)とホーエンザルツブルク城と崖(右)

 聖ペーター教会の墓地は花々が美しく、ガーデナーが管理している様にも出会います。大聖堂から祝祭大劇場方向に抜ける通り道に在り、観光地化しています。墓地を歩く・・・。えぇ、戸惑いを感じます。
 聖ペーター教会は男子修道院で、一方、兄妹関係を想起させるノンベルク修道院は女子修道院。どちらもドイツ語圏最古(:創建は各々696年、714年)とあります。ノンベルク修道院は、ご承知の通り、映画【サウンド・オブ・ミュージック】で主役のマリアが過ごした所で、一方、結婚したトラップ大佐と共に家族がナチスから逃れる際に墓地に隠れたシーンのモデルが聖ペーター教会のメンヒスベルクの崖下にある鉄格子で守られた横に広がるお墓です。小生もですが、同映画ファンには大切な訪問地です。
 聖ペーター教会には垂直に近い崖の岩盤をくり貫いて作られているカタコンベもあります。立ち寄ってみましょう。足元の階段はしっかり摩耗しており、滑り易く、踏み外しやすいので気を付けます。暗い中、崖には窓が開けられ、採光されています。上ると窓枠から大聖堂がほぼ正面に見え、顔を出して右側を覗き込むと、ホーエンザルツブルク城が見えます。垂直に切り立った崖の様子も見取れます。
 え? カタコンベですか? 地下にある墓所で西欧の教会では定番で、ザルツブルク大聖堂では自由に出入りできます。入口? 祭壇に向かってドームの右手側にあります。教会の地下に限らず、ここのように岩盤をくり貫いた洞窟・岩屋も含めて、カタコンベ(イタリア語:catacombe)と言うのですネ。
 祝祭大劇場の前を抜け、時間調整を兼ねて、メンヒスベルクに岩盤をくり貫いて設けられたエレベーターで上がりましょう。時間調整を兼ねますが、今、その目的はナイショ・・・。

メンヒスベルクの丘から眺める旧市街の景観(左)は、ホーエンザルツブルク城、大聖堂や祝祭大劇場Fなど、素晴らしい。崖上の小路を少し歩き、ブラシウス教会の塔Bの下は、観光客で混雑するゲトライデガッセで、モーツァルトの生家Mがある (中)。界隈の小路沿いの山野草 (右中下)。蔦が綺麗なブラシウス教会B (右)

 メンヒスベルクの丘 (Mönchsberg)へは、これもザルツブルクカードが有効で、岩盤をくり貫いて設けられたエレベーターで上がります。崖上には現代美術館等もありますが、何と言ってもオススメは景観です。この界隈でも映画【サウンド・オブ・ミュージック】のドレミの歌がロケされています。
 伸びやかな景観で、ホーエンザルツブルク城や大聖堂、聖ペーター教会などの塔・建物や、手前の崖下に祝祭大劇場も見える魅力的な場所です。幸い、観光客が少ないので、小生には嬉しい場所です。
 少し時間を割いて、木立の中、山野草に目を留めつつ小路を歩きます。教会の塔の下・向こうに見える狭い路地が人気の通り、ゲトライデガッセです。モーツァルトの生家があることでも著名です。個性的な建物・お店と、商品を象徴する彫金の看板もステキで、他の観光客等とぶつかりそうになることもあります。と言うか、意図的に体に接触してくる非観光客に留意せねばなりません。
 エレベーターで降りて、若干、戻ります。崖の上で見下ろした教会は、聖ブラシウス(生年不詳-316年)の名を冠した蔦の美しい教会(Spiritual Center St. Blasius)です。
 祝祭大劇場の内部ツアーに参加しましょう! 14時スタートです。
 チケットとCD等を扱うカウンターでザルツブルクカードを提示し、14時からの内部ツァーに加わります。入口ホールは壁画の美しく、音楽シーンは嬉しく眺めました。内部にはモーツァルトの名を関したホールもありますが、直近の準備中とかで見学できず、残念でした。狭い通路を通り、空間が開けて「来た!」と懐かしさを覚えたのが、岩盤に掘られた劇場で、映画【サウンド・オブ・ミュージック】のクライマックスシーンで大佐家族が出演したフェルゼンライトシューレ(Felsenreitschule、岩窟乗馬学校)です。子どもたちとマリアが歌った曲、大佐が歌った感動的な「エーデルワイス」など、思い出し、声を出さずに歌いました。
 さらに、狭い通路を移動し、空間が開けたら、NHK映像で馴染みの祝祭大劇場(Große Festspielhaus)。ヘルベルト・フォン・カラヤンゆかりのザルツブルク音楽祭の主会場で、岩盤を掘り込んで造られています。崖の上から眺める建物の奥が極めて浅い外観と比べ、“とても奥が深い”のです。舞台の映像では、例えば、2005年のアンナ・ネトレプコ主演の【椿姫】は鮮烈でした。彼女だけが赤の衣装で、他の出演者は、女性も含め、黒一色。2006年のモーツァルトイヤー(生誕250年)の【フィガロの結婚】ではネトレプコが白黒基調の衣装でスザンナを歌った斬新な演出の舞台など。そして、オーケストラピットにはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。とあれば、憧れを抱くのですが、残念ながら、自身にとっては敷居が高すぎます。チケット価格、ホテルは高く、着飾ることも強いられます。さらに、舞台は横に広く、小生の好みではないのです。この祝祭大劇場の構造を模したのが、大阪のフェスティバルホールで、やはり横長で、自身の好む音響とは異なる・・・など、思い起こしながらの内部ツアーでした。

祝祭大劇場の外観と、その界隈で振り返った景色(左)。ザルツブルクカードが有効、14時からの内部ツアーに参加:入口ホールの壁画(中)。【サウンド・オブ・ミュージック】の終盤に、家族が音楽祭に出演したフェルゼンライトシューレは元 岩窟乗馬学校(右上)。夏のザルツブルク音楽祭に向けて準備中の祝祭大劇場(右下)

 では、ゲトライデガッセへ向かいましょう。モーツァルトの生家を訪ねた後、単独行なら19時半開演の演奏会に間に合うようにウィーンに帰ります。ザルツブルク中央駅を16時08分発のRJに乗ります。“超割”で19.00EUR、ウィーン中央駅着は18時30分で、地下鉄1号線に乗り換えて3分ほどの乗車で、楽友協会至近のカールスプラッツ駅に到着で、十分間に合います。
 中央駅開業後は、朝、ウィーンを発つのが07時30分のRJで、ザルツブルク中央駅着は9時52分ですから、ザルツブルク滞在は約6時間です。
 ウィーンでの演奏会を没にして、夜に帰り着く際は、14時から約4時間のザルツカンマーグート巡りも含め、旧市街で飲食した後にザルツブルク中央駅発21時08発のRJで戻ります。ハイ、ホテルの自室に入るのは午前様になりますが、ザルツブルク滞在が約11時間になるので、価値ある午前様!
 風光明媚で、やはり映画【サウンド・オブ・ミュージック】ゆかりのロケ地もあるザルツカンマーグートを楽しむ旅はステキです。またの機会にご案内しましょう。

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