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始発のウィーン中央駅でユーロシティに乗車し、グラーツへ。所要2時間35分で、チケットは9.00 EUR。センメリング鉄道路線の裾野側の窓側自席からの風景点描。グラーツ中央駅ホームでの自撮り写真 (右下)

続 ウィーンを愛して(2)センメリング鉄道でグラーツへ

ウィーンの南南西・約150kmに位置するグラーツへはオーストリア・アルプスの東端に位置する高低差約457mあるセンメリング鉄道 S 区間を走行 (左)。センメリング鉄道の概要 (中)。レイルジェット先頭車 (右)

 グラーツGrazは、ウィーンに出かけるまで、全く知らない街で、知るに至ったのは、ウィーンでの演奏会に間に合う日帰り可能な行き先を模索していてのことでした。
 毎年4月になると、9月から翌年6月まで、新シーズンの国立歌劇場や楽友協会などの公演日程が開示されます。ウィーン滞在中のオペラ・演奏会等のスケジュールにより、ウィーン発着日帰り旅行の日を決めるのです。オペラは開演時刻が17時前後から19時など早いのですが、演奏会は19時半の開演が定番です。よって、日帰り旅行の行き先には、演奏会の日に18時半頃にはウィーンに戻れるコースを選択することになります。かつ、ホテルで朝食を済ませての出発が願いです。
 グラーツは以上の条件を満たしていました。オーストリア国鉄ÖBBで調べると、ウィーン中央駅始発でグラーツ行レイルジェット Railjet(RJ)やスロベニアの首都リュブリャナ行のECことユーロシティEuroCityがあり、復路は18時2分に同中央駅に戻るRJがあります。RJはオーストリアの高速列車で、ミュンヘン、チューリヒやブダペスト、プラハなど、国際列車としても運行しています。
 ÖBBのダイヤと価格を調べると、“超割”チケットが限定数出ることを知りました。これまで、グラーツには4回出かけましたが、何れも、“超割”で片道9.00 EUR、何と定価(37.30 EUR)の約75% offでの購入でした。円安で1 EURが140円としても1,260円、円高で1 EURが111円なら片道1,000円の計算になります。なお、オーストリア国鉄のHPで“超割”価格があることについては〔地球の歩き方〕に記載がありません(2016/17年版)。

車両編成端の裾野側自席でセンメリング鉄道を走るレイルジェットを車窓撮影(中・右は望遠モード)

 自身の体験ですが、オーストリアのほかスイス国鉄(連邦鉄道)やフランス国鉄の都市間特急は、日本の現状からして、長大と感じる多くの車両を連結♪しています。観光路線や都市間特急ではお客を立たせないことが基本方針らしいのです。また、日本の新幹線同様の線路幅(標準軌)でロングレイルなので、乗り心地はとても良いです。かつ、エンジンのない客車ゆえ客室内は静穏と言える状況です。
 長い車両編成であるため、よほどの事情がない限り、有料の座席指定は不要です。が、実は、初めてウィーンからグラーツに行った際は、ネットで座席指定をしました。往復の路線は、オーストリア・アルプスの東端に位置する山岳地帯を通過するからです。その路線の名称はセンメリング鉄道です。
 オーストリア政府観光局(austria.info/jp)の紹介文を引用します。
 [ウィーンから南へ、グラーツ方面の列車に乗って約80キロ行くと、グログニッツ Gloggnitz という山間の駅があり、ここからブラームスゆかりの地ミュルツツーシュラーク Muerzzuschlag までの約40キロの区間がセンメリング鉄道 Semmeringbahnで、1854年に完成した世界で初の山岳鉄道でユネスコ世界遺産に指定されています。現在、16のトンネルと16の高架橋があり、高架橋の一部は二層構造となっておりこの路線の目玉となっています。トンネルや構造物は自然の環境に調和するように造られており・・・](邦訳はゼメリング鉄道もあるが、オーストリア政府観光局の訳を採用)。
 座席指定した理由は、車両編成の端に位置する車両の裾野側の窓側席を確保したかったためです。
 山岳部では、急カーブが連続し、車両速度は上がりません。時速60km前後の鈍足でクネクネと・・・。そう、窓から覗き込むようにすると端の車両が見え、(窓が開かないのが残念ですが)撮影出来ました。石造りの橋梁やトンネルに入る様子などを眺めるのです。勿論、山並みや峡谷、集落など裾野側の車窓風景も見逃せません。鉄道ファンならずとも、子ども心が踊る景観なのです。
[ ♪:1978年に高架となった鳥取駅のホームに寝台特急≪出雲≫が機関車を含め12両停車していました。ホームの長さがその当時を物語っています。今時の日本は、新幹線や大都市圏を除き、田舎や山岳地方を走る特急は短小編成です。ところで、因美線を走るスーパーはくと号や山陰線の特急・快速は揺れがひどく、乗り心地の悪さに困惑しています。山陰新幹線誘致以前の課題だと自認しています。]

始発のウィーン中央駅でユーロシティに乗車し、グラーツへ。所要2時間35分で、チケットは9.00 EUR。センメリング鉄道路線の裾野側の窓側自席からの風景点描。グラーツ中央駅ホームでの自撮り写真 (右下)

 私が鉄道に関心を示す原点ですか?
 幼少時、今市から大社への国鉄の支線を走る客車に乗車した体験が発端です。出生地が雲州平田駅のある“バタ電”こと一畑電車のある平田市(当時)であり、国鉄当時の汽車には憧れていました。幼児期に2階で祖父と過ごす際、南風が吹く天候の夜は、祖父の実家がある「“直江の鉄橋”通過時に、蒸気機関車が汽笛を鳴らす」と聞かされました。懐かしく思い出す汽笛です。
 「うんてんしゅはきみだ、しゃしょうはボクだ」の唄の世界は、幼児の心に夢を育み、私事、職業としての車掌さんに憧れをいだいたことも思い出します。60年も前のことです。
 今市は電鉄出雲市駅に名称が変わり、大社駅は廃線に伴い、建物のみが文化遺産として残っています。平田市は出雲市に併合され、消滅しました。結果、平田市駅が雲州平田駅に戻り、内心喜んでいます。
 1970年に鳥大に合格し、当時、湖山で2年間の医学進学過程において、アルバイトで貯めて、国鉄の“北海道均一周遊券”で巡りました。西欧の鉄道は、それこそ“夢のまた夢”で、まさか、各地で体験できる人生になったとは・・・。それも還暦年以降のことで、自身、摩訶不思議の思いを抱きます。

センメリング鉄道を走る初体験塗料のレイルジェット(2016年5月)。ウィーン中央駅到着後に先頭車を撮影 (右上)

 話がそれました。
 センメリング鉄道の続きですが、現在、27.3 kmの“センメリング・ベース・トンネル”の工事が進んでおり、特急が鈍足で山岳地帯を走るのは、残り約10年・・・。ウィーン・グラーツ間は約150kmで、現状ではRJ・ECで所要時間2時間半ですが、ベース・トンネル2026年の完成(予定)後は、センメリング鉄道を鈍足で走行する際の景色が失われる代わりに、30分程の時間短縮になるようです。
 日本では“ベース・トンネル”の用語はなじみがありません。例えば、東海道本線は御殿場を経由していました。急勾配・急カーブを蒸気機関車が懸命に牽引し、鈍足で走行していた特急列車の車窓から近くに富士山を眺めることが出来ていたのです。南に伊豆半島につながる山地を東西に貫く長大トンネルが構想され“丹那トンネル”が難所を解消しました。日本における“ベース・トンネル”の好例ですが、調べると“丹那トンネル”の竣工は1934年で、小生が生まれる前です。難工事であったことなどで、絵本や社会の教科書で記憶に留めているのでしょうね。東海道本殿で、蒸気機関車が列車を牽引し、最後尾は展望台付の車両で上等な服の夫婦が絵本に描かれていたことも思い出します。現在、復活し、超人気・高倍率の豪華客車列車が不定期のイベント列車として国内各地を走るようになったのですネ。
 スイスではアルプスを南北に貫くベース・トンネルが都市間特急(ECやInterCity)路線になっています。幸い旧線は観光路線として残っています。スイスパスで車窓を眺めながらの移動は、それ自体が楽しみなのです。例えば、ベルンからイタリアのミラノへ方面への鉄道は“レッチュベルグ・ベーストンネル”を都市間特急が高速走行しています。観光路線は峠越えの旧線が活かされ、急行《レッチュベルガー》が走っています。途中下車し、ロープウェイに乗り、ハイキングしなど、楽しめます。
 が、オーストリアでは“センメリング・ベース・トンネル”が完成した後、どうなるのか情報がありません。仮に、走行するとしても、各駅停車の小編成で、乗車券の価格が高くなることは必定でしょう。
 その理由ですが、オーストリア国鉄の乗車券価格で、自身、解明できていない事実があります。それは、主要都市間の特急では“超割”乗車券が出ますが、田舎の街に出かける際は、それがなく、近距離でも価格が高いのです。日本の常識と全く異なります。例えば、グラーツまで片道9.00EURの“超割”がある列車で、同じ列車を用いても、途中のセンメリングまでは片道20.40EURが最安値です。

 エ?! マニア? 自身、そう思ったことはありませんが、鉄道旅行は好きです。学生時代のJTB大版時刻表を用いた机上旅行体験が、今のネット時代に活かされています。情報収集、分析や活用・実践が性に合っているのでしょうネ。実は、近年感じたことですが、例えば、中病時代の新生児医療や(当時の)骨髄移植技術の導入などと、オツムの働きが類似しています。
 さぁ、間もなくグラーツに着きます。ハプスブルク家の王宮など、世界文化遺産に認定されているグラーツ旧市街へご案内しましょう。

スイス:ブリーク発の旧線を走る≪レッチベルガー≫(左)。シンプロン峠の山並みとフィスプの街 (左中)。山岳リゾートの山村・カンデルシュテークで下車 (中) し、神秘的な山上湖エッシネン湖へ (右中・右)

付1) 2015年12月、ウィーン中央駅完成後から、ウィーン国際空港始発のレイルジェット(Railjet, RJ)が多くなり、空港からの利便性が増しています。
 ザルツブルク方面への特急は、RJのほか、オーストリア国内特急としてIC(InterCity)があり、旧客車を電気機関車が牽引し、停車駅がRJより多く、所要時間が長かったのです。が、2016年12月11日に2017年のダイヤ改正により、ICが廃止され、RJで一本化し、そして、RJは停車駅の少ない従来型と、IC相当の駅に停車するタイプが走ります。何れもRJの標記ですが、主要駅間の所要時間が異なる2系統になります。例えば、ウィーン中央駅とザルツブルク中央駅間は、往復とも、所要時間は2時間22分のRJと、旧IC相当2時間53分のRJです。
 関心のあるアナタはぜひ oebb.at をご覧ください。また、レイルジェットの詳細は以下にあります。

オーストリア政府観光局 > 旅に役立つ情報 > アクセス・交通 > レイルジェット 
付2)≪レッチベルガー LÖTSCHBERGER≫は、ベルン - レッチベルク - シンプロン鉄道 Bern - Lötschberg – Simplon Bahn に由来する BLS 運行の地域急行 RegioExpress (RE)で、実質は≪観光急行≫です。
BLS社はトゥーン湖・ブリエンツ湖のクルーズ船も運航するスイス最大の私鉄です。

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