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[鳥取県小児科医会の会報誌に掲載された文(原稿)です。]

(2007年4月29日記)

【私の趣味】 

クラシック音楽鑑賞と兵庫県立芸術文化センター

 

 2005年の8月の某日、登録済の「電子チケットぴあ」のメールに珍しく目を留めました。「兵庫県立芸術文化センター」とあったのですが、記憶に無い施設です。調べると、阪神淡路大震災後10年を経過し、西宮に新築された複合ホールと分かりました。

 フランスを基地として世界的に活躍している佐渡 裕 が音楽監督であり、10月、大ホールでの開幕は、佐渡の指揮でベートーベンの交響曲第9番『合唱付』とあります。幸い、日曜日公演があったのですが、既に全席完売であり、記念すべき機会を逸したことは残念至極でした。

 佐渡は、ホールの企画段階から参画し、専属の管弦楽団は、何と、世界十数か国で自らが参加してオーディションをし、教育目的を含め、若い演奏家を選出したとのことです。即ち、わが国では珍しく、“箱モノ”に留まらず、ソフトが両輪となっていることは特筆すべきことでしょう。

 4階席まであり、2,000席を越える大ホールは、木のやわらかさ、温かみがあり、音響も秀逸で、自身にとっては、東京のサントリーホールと共に、居心地の良い大好きな空間です。

 また、417席の小ホールは天井が高く、ステキな空間で、ステージを取り囲む8角形に席があります。前方3ゾーンが聴き易く、見易いのですが、この3ゾーンでは260席となる、贅沢な空間です。

 さて、兵庫芸術文化センター管弦楽団(兵庫PACオケ)は、2006年4月に第1回定期演奏会(定演)を開始し、第1期1年間に8回の公演を済ませ、今年4月から第2期(2008年6月までの9回公演分)が始まっています。ありがたいことに、定演は土・日の15時開演であり、(土曜日の夜は神戸に宿泊し・・・)日曜公演でも終演後病院に帰着し、回診することも出来ます。

 定演の“年間通し券”を購入すると、年間を通じて《 my seat 》で聴けることが出来ることが嬉しく、かつ、1回分が3,150円と格安になること(各回購入では4,200円)の利点もあります。

 ただし、第1期、第2期とも、予測を超えた人気で、完売になっていることが難点(?)ですが・・・。

 関心のある方は、第3期(欧米並みに9月スタート;2008年9月からの1年間)を狙うことになります。発売日はいつになりましょうか・・・。(2008年5・6月頃?)

 チケットの“完売”は、兵庫PACオケの定演のみならず、オペラでもあります。例えば、2006年はプッチーニの「蝶々夫人」が当初6公演の企画でしたが、2公演が追加され、計8公演、約16,000席が完売になるという、《クラシック音楽界における事件》になりました。そして、今年は7月下旬から6公演のモーツアルト作曲「魔笛」がありますが、これまた完売となりました。(5月に追加公演の発表予定)

 兵庫PACオケは、コンサートマスターを除き、若い人たちが主体ですが、佐渡 裕 や、国内外から招聘された新進気鋭・実績のある指揮者により、素晴らしい演奏を重ねています。定演、オペラのみならず、小ホールでのアンサンブル、とくに、(鳥取県人には体験できませんが、)平日の午後には500円で聴ける“1 coin concert”など、企画が目白押しです。

 兵庫県立芸術文化センターは無料登録の会員制を導入しています。関心のある方は、まずは、HPにアクセスし、各種の情報に触れてはいかがでしょうか? そして、生演奏と共に、両ホール(楽器としてのホールの良さ)を、是非、体験してみられますように!

★追記1
 2006年11月の第5回定期演奏会に、ジャズピアニストの小曽根 真 がモーツアルトのピアノ協奏曲第9番『ジュノム』を演奏しました。曲中、とくにカデンツァにおいては、ジャズピアニストならではの味わいがあり、心躍るような気持ちで嬉しく聴けました。この年、小曽根は、東京国際フォーラムを主会場として開催された第2回“熱狂の日”と宮崎国際音楽祭において、各々異なる指揮者、オーケストラと組んで、同じ『ジュノム』を演奏しています。兵庫を除いて、NHK-BS2で放映されたこと(~録画済)で、小生は小曽根による『ジュノム』のピアノ演奏を3回聴く機会に恵まれました。ジャズピアニストゆえに当然といえましょうが、小曽根のカデンツァは毎回異なり、各々味わい深い演奏となっていました。モーツアルトが現代に生きていたら、小曽根の演奏を喜び、ジャズを取り入れた自由闊達な曲を創ったことでしょうねぇ・・・。

 

★追記2
 現在、第一線で活躍する指揮者としては世界最高齢とされるスクロヴァチェフスキの演奏をNHKで見聴きしました。ベートーベンの交響曲でしたが、毅然かつ実直な演奏を心に留めていました。彼が手勢のザールブリュッケン放送交響楽団を伴い、2006年、東京でベートーベンの9つの交響曲の全曲演奏をするとの情報をチラシで得たのですが、関西では、兵庫県立芸術文化センターで1回公演のみで、6番『田園』と5番『運命』を演奏するとのこと!:平日19時開演でしたが、幸い、当時は智頭医療圏における感染症が少なく、一方、チケットの売れが、小生の期待に反して(?)全く低迷していたこともあり、看護師さんの許しを得て(?)、2時間の時間休を得て出かけた次第です。

 当日は、約半数の空席がありました。小生は楽団員に申し訳ない思い(?)で、彼らが登場してから揃うまで、拍手を続けて迎えようと決めました。小生は2階席でしたが、1階席からも(心を共にしたファンからの)拍手が持続し、ホール全体に拍手が響き続きました。なお、団員を迎える拍手は、後半も同様で、楽団員が揃うまで、拍手が途切れませんでした。演奏? ⇒ 秀逸、感動モノでした。

 1曲目の『田園』で「bravo!」、2曲目の『運命』でも勿論「bravo!」の連発!~小生は大きな声が出るのですが、全く見知らぬ、隣席界隈の淑女的な女性から「もっとブラボー!を発してください」と、妙な依頼をされた次第で、感動を分かち合いました。珍しい体験でした。

 83歳のスクロヴァチェフスキは、鳴り止まない拍手に何度も何度もステージに戻り、最後は、コンサートマスターの手を取り、楽団員を退かせたほどでした。それでも、拍手が持続し、女性ヴァイオリニストがスクロヴァチェフスキの手をつなぎ、再びステージに顔を見せたのです。思い出に残る、印象的な場面でした。隣席界隈の(高齢の)女性たちと「すばらしい演奏会でしたね」と話しつつ帰路に・・・。

 スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団によるベートーベンの交響曲は全曲が販売されています。タワーレコードなどで購入可能ですが、今調べたら格安のbox輸入版が出ていました。

 

★追記3
 今年1月の日曜日、佐渡の指揮で兵庫PACオケ第6回定期演奏会がありました。いつもと違う大ホールロビーの雰囲気があり、中に入ると“開館50万人記念”の垂れ幕がありました。セレモニーでは、佐渡音楽監督と兵庫県知事がスピーチされました。一方、佐渡が関与し、楽団員が自主運営しているフランスのオーケストラ(ラムルー管弦楽団)の存続に係るドキュメントをNHKが放映して間もない頃でした。小生はその番組を見たのですが、セレモニー終了後、佐渡に感想・感動したことなどを話したのです。佐渡は喜び、固く握手を交わした次第でした。演奏以外の出合いも嬉しいことです。

 

★おわりに
 智頭に異動して3年半になります。智頭に居るときは常にon standbyであり、鳥取の自宅に帰った時も、on call です。(この約半年間、疲労感が蓄積気味であり、)息抜きを兼ねて、(美術館等を含め)“芸術文化活動”に(入院患者の状況等をみて、)出かけるようにしています。

 留守の間は、鳥取市内の病院小児科の諸先生には、智頭の子どもたちの急患診療を全面的に委ねることになります。これまでもお世話になりましたし、今後も何卒よろしくお願いいたします。

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